第5話 自業自得


 では、ゲームで使用していたキャラクターの能力を引き継いでいる俺が主人公であるダニエル達を助けないかというと、まず一つに負けイベントである以上いくらダメージを与えても勝てない可能性があるのと、ここで結果を変えてしまうと未来にどのような影響を与えてしまうのかが分からない為である。


 そもそもこのイベントは『主人公が強くなると決心した大事なイベント』でもある為、主人公たちには是非とも俺の為に世界を救ってもらいたいので変に俺が手を加えない方が良いだろう。


 そう考えた結果が、イベント後にせめて欠損した足くらいは治せるようにしてやろうという事である。


 そんなこんなで俺は難なくホーンラビットを狩り、薬草も採取し終えて教師陣に成果を見せて休憩所(ただの開けた場所なのだが)で待機していると山の奥の方でブラックベアーであろう雄叫びが響き渡るではないか。


 それと同時に、やはりこの世界はゲームでプレイした通りにイベントが発生するという事が分かったのと、ついに来たかという変な緊張感が俺を襲う。


 できればヒロイン両方とも怪我無く無事に帰ってきて欲しい。


 そう思っていた俺の願いも虚しくドゥーナの片足が欠けた状態で担架に乗せられて運ばれてくるではないか。


 それでも、ブラックベアーはゲームと同じく教師の放った弓が目に当たり、そのまま逃走していったようで、それに関してはゲーム通りで良かったと思うのであった。





 ゲームでの学園時代の主なイベントは負けイベント以降は特になく、あるとすれば三年生学園最後の夏休み前に俺の両親が馬車で移動している時に盗賊に襲われて殺されてしまうくらいであろうか?


 その為、ブラックベアーの一件以降は比較的何も問題なく平穏な日常を過ごせていたと言えよう。


 逆に主人公はというと、あの日以降何かに取り憑かれたかの様に鍛錬に費やすようになった。


 主人公には申し訳ないのだけれども、俺のスローライフ計画の為にも是非ともこのまま強くなって魔王を倒してもらいたい。


「ルーカスは居るかっ!? 直ぐに来てくれっ!!」


 そして時期的にはそろそろ来るかと思っていたのだが、やはりゲームのシナリオの通り両親が盗賊に襲われて死んだようで、担任が真っ青な表情で俺の名前を呼ぶではないか。


 ちなみに、両親は盗賊に襲われたとなっているのだが、正確には盗賊に堕ちた領民である為、徴税率を上げ自分たちは散財して毎日遊んでいた両親の、自業自得としか言いようのない結末と言えよう。


 

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