第4話鬱屈とした気分になる


 むしろ原作ではドゥーナではなくて俺が主人公であるダニエルへ突っかかって行くシーンなのだが、俺が動かない場合はドゥーナが俺に突っかかってくるようだ。


 それも、この学園を卒業するまでの辛抱だと今は我慢するしかないだろう。


「そう言っている。実際にお前の実技試験の結果はダニエルに負けているではないか」

「あれは総合的な結果であり実際に俺と戦った訳ではない。そもそも俺とダニエルが戦ったら俺が勝つに決まっているだろう? むしろ俺と戦わなくて良かったではないか。平民らしく地べたで這いずる姿をクラスメイト達に見られる事も無かったのだからな」

「どこまでもクズな奴だな……っ」


 そしてドゥーナはそう言うとダニエル達の元へと戻って行く。


 いざ突っかかって来られると鬱陶しいのだが、これからドゥーナかマリアンヌのどちらかが負けイベントで主人公に選ばれなかった方の足が欠損するのだと思うと複雑な気分である。


 まぁ、だからこそ追々匿名でフェニックスの尾をヒロインの実家へと送り届ける予定ではあるもののだからと言って『知っていて何もしなかった』という罪悪感が消えるわけではない。


 しかしながらメインキャラクター達には関わりたくないので、卒業後は自分の領地でひっそりと暮らして行こうと考えている。


 ちなみに口調や態度は変えるつもりは無い。


「では、クラスごとに学園の裏山にある指定された場所まで徒歩で移動してもらうっ!」


 そんな事を思いながら時間を潰していると、ついにイベントが始まったようで担任の教師が学園の裏にある、事前に説明をしていた場所まで移動する旨の指示を出す。


 その指示を聞き俺は更に鬱屈とした気分になる。


 ちなみにこの授業そのものは注意していれば決して危ないような授業ではなく、ホーンラビットの討伐と薬草採取という、ギルドで出されている仕事の中でも比較的低ランク層の冒険者達が受け持つレベルである。


 勿論自然を相手にする為イレギュラーは付き物であり、それが今回の負けイベントであるブラックベアーとの遭遇である。


 本来であればゲーム終盤で出くわすような魔物である為当然今の主人公たちでは太刀打ちできる訳もなく負けてしまうというイベントである。


 ちなみに何故こんなところにブラックベアーがいるのかというと、縄張り争いに負けたはぐれブラックベアーという事らしく、ブラックベアーの世代交代が行われる二十年に一度はこの学園の裏山にも訪れる可能性はゼロではないらしい──と、ファンブックに書いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る