第3話 全てを引き継いでいる

 取りあえず俺は今自分ができる事を確認する事と、負けイベント後はフェニックスの尾を入手できるダンジョン攻略がメインとなるだろう。


 そんな事を思いながら俺は学園の端にある一番人気のない修練場に来ていた。


「一応気配を探ってみたけど誰もいないようで良かった……」


 万が一誰かがいる可能性も想定して貸し切りにしているのだから当たり前ではあるのだが念には念を入れて確認した方が良いだろう。


 そして俺は誰もいない事を確認すると早速自ら感じている感覚が正しいのか確かめる事にする。


 その感覚とは、何故だか分からないのだがゲームで育て上げたキャラクターのステータスとアイテムを引き継いでいるような確信に近い感覚が、前世の記憶が戻った時から感じていたのである。


 ちなみにこのゲームなのだが、主人公はプレイヤーの好みのスタイルに育て上げる事ができ、その点はかなり自由度が高いゲームとなっていた。


 そして俺は魔術師と剣士のジョブをカンストさせる事で入手できる魔剣士へと育て上げており、当然専用武器である剣型の魔杖もかなり苦労して制作していた。


 それほどまでにこのゲームにのめり込んでいたとも言うのだが、今となっては良い思い出である。


 そんな事はさておき、俺は【ストレージ】からその苦労して作った魔杖を取り出すと、次々にゲーム内で良く使っていた魔術の数々や剣術の立ち回りや剣技を試していく。


 そして、小一時間程身体を動かしつつ魔術を行使して俺は確信する。


 今の俺は間違いなくゲームで使用していたキャラクターのステータスから入手したアイテム、行使できる魔術や剣技全てを引き継いでいる事に。


 しかしだからと言って死亡フラグが消えたわけではないのだが、力こそ正義という言葉があるように意外と何とかなりそうだと思うのであった。





 そして遠征当日。


 俺は鬱陶しい主人公たちから離れた場所で講師たちの注意事項を右耳から左耳へと聞き流していた。


「少しは真面目に聞いたらどうだ?」

「あ?」

「お前一人がクラスメイト全員の足を引っ張り、迷惑をかけるような事にならない為にも講師たちの話をちゃんと聞いておけと言っているのだっ」


 そんな俺の態度が気に入らなかったのかドゥーナがいちいち突っかかって来るではないか。


 正直言って俺の死亡フラグをまき散らしまくる主人公とドゥーナ、そしてマリアンヌには極力関わりたくなかったのだが、同じ学年、同じクラスである以上そうもいかないらしい。


「あ? この俺が? 誰の足を引っ張り迷惑をかけるだって?」

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