第2話 相手をする必要も無


「あなたに言われなくともダニエルはトップの成績でこの遠征をクリアしてみせますわっ!!」


 そんな俺に対してマリアンヌが目じりを吊り上げ、怒りの感情を隠そうともせずに噛みついてくるではないか。


 恐らく以前の俺であればこのマリアンヌの反応に対して、ダニエルへ怒りの感情を向けていたのであろうが、今の俺はマリアンヌに怒りの感情を向けられたところで何も感じることは無い。


 むしろ、マリアンヌはいくら俺がアピールしようが、そして俺が善人であったとしても俺の事を好きになるわけが無いのだから、そんな奴相手に感情を揺さぶられる事も無いだろう。


 それは主人公に対しても言えることで、前世の記憶を思い出し、ここがゲームの世界に何故か転生している事を知ってしまった今、こいつらに対して俺が抱く感情は『無』である。


 むしろ相手するだけ時間の無駄であり、なんならこのままゲームのシナリオ通りに俺が動けば死ぬ運命である可能性が非常に高いのである。


 であれば、俺が生き残る為にも最善の行動はこいつらに関わらないという事である。


「情けない。これでダニエルと同じ男であるならば一度はダニエルに勝ってみせてからデカい口を叩くべきだな」

「まぁまぁ二人とも落ち着いてっ。俺は大丈夫だからさっ!!」


 そして、俺がそんな事を思っているなどと思ってもいないであろうドゥーナがマリアンヌに続けとばかりに噛みつき、それをダニエルが止める。


「フン、躾けも碌にできないとは情けない」


 そんな三人にこれ以上時間を取られるのは無駄でしかないと判断した俺は捨て台詞を言うとそのままこの場から去る事にする。


「に、逃げるのかっ!?」

「やっと自分がダニエルには敵わないって気付いたのねっ!!」


 そんな俺に二人は違和感を覚えたのか、この場から去る俺に噛みついてくるのだが相手をする必要も無いのでそのまま無視をするのだった。




 その後は何の問題も無く学園の授業は終わり、俺はこの一日でゲームの流れを頭の中で纏め上げながら過ごしていた。


 俺の記憶が正しく、そしてこの世界がゲームのストーリーと同じような展開になるのだとすれば、この後主人公は負けイベントでヒロイン一人を失う事となる。


 失うと言っても死ぬ訳ではないのだが、それでも片足を失ってしまう為学園を卒業後主人公の旅に着いていけなくなるので自動的に主要キャラから外されるという事である。


 ちなみに主要キャラからは外れるとは言っても途中フェニックス討伐で手に入る『フェニックスの尾』というアイテムを使用する事で仲間にする事は可能なのだがヒロインへと戻る事は無い。


 

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