転生したら悪役領主として主要キャラ達から殺されるキャラクターだった為、主人公達とは関わりたくないので領地を立て直してスローライフを極め領地に籠りたい。

Crosis@デレバレ三巻発売中

第1話 どのルートでも死亡する噛ませ犬的なポジション


「お前みたいな平民など足手纏いでしかないのだよ。頼むから貴族でエリートである俺様の邪魔だけはしないでくれよ?」


 つい先ほど、ブラック企業での業務を終えて家に帰り、ろくに飯も食わずにコンビニで買った安酒でつまみを流し込み風呂も入らずにワイシャツのまま布団で寝ていた筈なのだが、気が付いたら俺は今目の前の平民に対して嫌味を言っているではないか。


 それと同時に、この世界で産まれてからこれまでの知識が流れ込んでくる……いや、逆か。前世の記憶が俺の中に流れ込んでくるではないか。


 これはもしかしなくても俺は前世で一度死んでこの世界に転生したというものではなかろうか?


 いや、もしかしなくてもそうなのだろう。


 しかしながら俺は前世の記憶を思い出した事である衝撃的な事実も一緒に思い出す。


 今俺が転生しているルーカス・フォン・ランゲージは、前世俺がハマっていたRPGゲーム『暁の夜明け』で主人公に噛みつく悪役であり、最終的にどのルートでも死亡する噛ませ犬的なポジションの悪役キャラクターではないか。


 どれだけ噛ませ犬かというと、まだ主人公に殺されるのはマシなほうで、父親の死により領地に戻り父の後を継いで領地経営し始めるのだが父親同様に酷い経営で住民を苦しめ、執事やメイドなど使用人に毒殺やら刺殺されたり暴徒化した住民に殺されたりと、本編と関係ない方法で殺されるストーリーの方が多い程には噛ませ犬キャラクターである。


 そして、今俺が嫌味を言っている相手が何を隠そうRPGゲーム『暁の夜明け』の主人公、ダニエルなのである。


 因みに何故今嫌味を言っているのかというと、これから行う遠征で平民であるダニエルに対して貴族でありエリートの俺である足を引っ張るなと、ぐちぐちと言ってた訳である。


 そんな主人公は怒りを隠して張り付いた笑顔をしているのだが所詮は子供。社畜として揉まれて来た俺からすれば主人公の感情など隠していないに等しい。


 むしろこれほどまでに分かりやすいにも関わらずその事に気付けなかった俺の駄目さ加減ときたら……。


 その主人公の両脇には狼耳を生やし、腰まである長い髪をポニーテルで纏めてる獣人ドゥーナ・ミラ・ファングと白い修道服を着た聖女マリアンヌ・サヴォイア=アオスタが、怒りの表情を隠そうともせず俺の方を睨んできていた。


 そもそも俺は、マリアンヌが主人公と仲良くしているのが気にいらないという理由で突っかかり始めたのだが、いくら何でもだからと言ってこの方法は逆効果である事は少し考えれば分かるような事であろうに。


そんな事すら分からなかった自分が情けない。

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