終章

聖女と竜~ルベリアとキラ~

 ルベリアとティアは、ラファーガを目指す途中で森の小川に差し掛かった。


「よかった、川だわ」

「川があると、何かいいことがあるの?」

「きっとこの先に道があるに違いないわ」

「もし道がなかったら?」

「暗くなったらあなたが飛んで、森を抜ければいいのよ」

「そんなに上手くいくかなあ」


 小川を前に、2人は座り込む。水面がキラキラと輝き、せせらぎの音が静かに響き渡る。


「ねえリーベ、あのね……」

「どうしたの?」


 ティアが不安そうにルベリアに尋ねる。


「こういうとき、ボクは一体どうすればいいのかなって思ったの」

「どういうこと?」

「だって、あんまりにも幸せすぎるんだもの。こんなのって、いいのかな?」


 川面を眺めながらティアは零す。ティアのオレンジ色の体色が川面に映り、太陽のように輝いている。


「こういうときもどういうときも、あなたはあなたでいいのよ」

「そうなのか……よくわかんないや」


 2人はくすくすと笑い合う。


「私もわからないことだらけよ。でも多分、私は私でいいのよ」

「そうだね、リーベはリーベのままがいい」


「私、あなたが好きよ」

「ボクも、キミが好き」


「ずっとずっと大好き。死んでも大好き」

「死んじゃダメだよ」


「ずっとあなたは、私が守るんだから」

「違うよ、キミを守るのがボクなんだよ」


「ほら、やっぱり私たち似たもの同士よ」

「そうだね」


 ティアは竜の姿から少女の姿に変わり、ルベリアに抱きついた。


「ルベリア、あったかい。お日様みたい」

「あなたもよ、キラ」


 ルベリアはティアのオレンジ色の髪を撫でる。その太陽の輝きを閉じ込めたような竜の色で、北竜のキラは輝く聖女ルベリアを強く抱きしめる。


「リーベ、愛してる」


 川のせせらぎが青空に溶けていく。青空はどこまでも高く広がり、何の制約も受けずに愛し合う2人を見下ろしていた。


 ― 完 ―


↓あとがきがあります↓

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