第3話 うお~!チームの成長に貢献するぜ!
「むん!」
ハゲが身の丈ほどもある斧槍を振るうと瞬く間に魔物は真っ二つに切り裂かれ、ダンジョンの泥臭い岩壁にびしゃりと血しぶきがかかる。
大きめの猿を煮染めて臭くしたような魔物だった。
まあ、魔物なんかどうでもいい。
「ま、こんなところだろう」
「や~ん、かっくい~さっすが~!」
「相変わらずお見事な腕前で!」
「本当だねえ、あたしもいつかあんたみたいになりたいもんだよ!」
モブたちが歓声を挙げながら当たり障りのない言葉でハゲを褒め散らかす。
まあ黙ってるのもあれなんで、俺もなんか発言しようっと。
「ふう……魔物もだいぶ倒しましたし、もうそろそろ日が落ちてきましたんで地上に戻るとしましょう!」
「馬鹿者、お前は何を言っておるのだ!まだダンジョンに入って十分も経っておらん。ていうか今の奴で一匹目だ!」
俺の提案はハゲにあっさり却下される。
発言力のない下っ端は辛いぜ。
それからはまたダンジョン探索だ。
物陰でぼんやりと突っ立っているだけで魔物はどんどん解体されていくので俺はやることがなく楽でいい。
小太りが棒を振りまわしながら「聖光弾!」とか叫んでて腹を抱えて笑い転げそうになる。魔物にとっちゃたまったもんじゃないだろうけどな!
「どうだお前ら、今日の戦果は?」
ハゲの言葉に応え、俺はチームのために率先して発言する。
「へへっ、リーダーのおかげで上々です!今日はこの辺で引き揚げとしましょう!」
「馬鹿者!」
またもハゲに叱られてしまう。
話もロクに聞いてもらえないとか新入りは辛いぜ。
あ~あ、やっぱり普通の冒険者なんて面白くもなんともねえな~!
この仕事が終わったら女戦士(身長160センチ以上、Fカップ以上を希望!)でも探しに行こうっと!
「へえ、すみません。しかし、リーダー。このダンジョンの目的地というか奥には何があるんですか?」
「……うむ、アタケよ。ここまで来ればもうそろそろ話してもいいだろう。皆も心して聞くがよい……」
「リーダー、本当すか!?」
ちなみ今さらだがこいつは別にリーダーというわけじゃないかもしれない。
だって俺以外誰もリーダーとは呼んでないからだ。何となくリーダーみたいに見えるからそう呼んでいるだけだ。
「このダンジョンの奥深くには古の邪神が封印されているという……」
「はあ」
「うむ、それでだな。……奴は生贄の命と引き換えに財宝を授けてくれるそうだ」
「へえ、つまりこれからみんなで邪神退治なわけなんすね~」
「…………」
のんきな俺の言葉にハゲは無言で俺を見つめる。
まるで石造りの像のような何とも冷たい眼差し。他の連中も同じくだ。
「へ、え?あ、あのー……?」
「「……」」
もしかして、俺がその邪神の生贄なのか!?
思わず自分の顔を指差すと、ハゲはこくりとうなずく。
「ち、ちょ、ちょっと待ってくださいよ。純粋な若者をだまくらかして生贄に差し出すなんて大変いけにえー話じゃないっすか!」
何てこった!俺みたいな素人をダンジョン探索に誘うなんておかしいと思ったよ!
うまい話には裏があったんだ!
「ひゃはは、流石です!こいつに鎧を買ってやったのは途中で死なれたら雇った意味がないからだったんですね!」
小太りがにやにやと卑屈な笑いを浮かべながら俺を見つめると、盗賊っぽいモブが同調する。
「ねえねえ、アタケ君だっけ?ここまでお疲れ様!あたしが君の荷物も預かってあげよっか?」
「いやいや、冷静になってくださいよリーダー!」
「ふん、俺は冷静だ。お前を差し出して得た宝は今後の大きな糧となろう」
ハゲは聞く耳を持たない。
くそ、どうすればいいんだ!
俺は斧槍を肩に置くハゲを前に必死に考えを巡らせる。
まさか俺が生贄になるだなんて!
確かに財宝は重要かもしれないが、ダンジョンの奥底に潜む邪神からお宝をもらうみたいな怪しい話を信じるより、その力をうまく使ってもっと楽して冒険者稼業で儲ければいいだろうに……。
(あっ)
いい考えが思いついたぞ、これならまだチャンスはあるかもしれない。
俺は深呼吸すると、思い切ってリーダーに話しかけることにした。
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