校長先生のお話

 式典の類が嫌いだ。高校の卒業式は一応出たが、式典が嫌い過ぎたせいか、リハーサルのことを綺麗さっぱり記憶から消していて、卒業式の数日前、自宅でのんびりゲームをしていたら学校から電話がかかってきたくらいだ。

 院生になるときには入学式からさぼっていたし、卒業式の日は外国にいた。

 なによりも訓示の類の長い話が嫌いなのだ。

 校長先生の訓示は、申し訳ないが本当に苦痛であった。

 というわけで、ありがたいお話のときは、大抵の場合、別のことを考えている。


 さて、太郎丸(仮名)と次郎丸(仮名)はマテができる。

 大変偉い子たちだ。


 食事の時も少し待ってもらってから、食べさせはじめる。

 マテができると、食べ物を前にしたときのトラブルが格段に減るので、これはやらないといけない。


 この時間、もったいないなと思った私は、ここでお話をすることにした。


 「太郎丸(仮名)くん! 今日はドッグランで大きなお友達に体当りされても怒らなかったね。大変、素晴らしいと思います。ただ、あそこで吠えなかったら、もっと良かったと思います。次にいかしていきましょうね!」

 太郎丸(仮名)がひんひんと鼻をならす。

 「次郎丸(仮名)くん、ポチ丸(仮名)くんがどんなに好きでもずっとつきまとってはいけません。彼がもう疲れたと言ったら、ちゃんと離れてあげましょう」

 次郎丸(仮名)がうぐぅぐうと喉をならす。

 私の訓示は続く。

 

 気分は校長先生である。

 もちろん、は迷惑そうである。

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