破壊王のしつけ
太郎丸(仮名)は久しぶりに飼った犬であった。
私が(子)犬と接していない間、犬のしつけ界隈も、ものすごく進歩していたので、色々と学んだ気がする。
最初、ペットシーツは吸収率がよく交換の回数が少なくても良いものを買った。
一度使った後は使ってくれず、全然関係ないところに撒き散らされた。
ペットショップで「これをトイレトレーの真ん中に備え付けると、そこで犬がトイレをしてくれる」という触れ込みのトイレポールも買ってみた。
太郎丸(仮名)も大喜びだ。
トイレポールは無惨にも破壊された。
ある日、かかりつけの獣医さんに相談してみた。
「犬はきれい好きなんですよ。人間も汚い公衆トイレとか嫌ですよね」
目からウロコだった。
ペットシーツを薄型一回交換式に変える。
粗相の回数が減った。
後はひたすら褒め続けるだけだ。
「さすが、太郎丸(仮名)さん! 世界ペットシーツ射撃選手権期待の大型新人!」
彼が華麗に足をあげているときに、横でジプシーキングスの”Djobi, Djoba”(注)を歌った。もちろん愛しているということを伝えたいだけである。サビのコーラスの何か擬音的な想像をした人はスクワットをして反省するように。私も当然付き合う所存である
太郎丸(仮名)は破壊王で椅子やら机やらかじりまくった。
我が家の食卓セットは実家からのおさがりであったが、結構よいもののはずだった。
かつての破壊女王菊子(仮名)もそれなりにかじっていたが、太郎丸(仮名)は前世はげっ歯類かと思うくらいにかじった。
歯の生え変わりまでの間、子犬というものは歯茎だか歯が痒いらしく色々なものを噛みたがる。
食卓はかじるものではないと言い聞かせ、かわりに犬が噛める木やロープを与えた。
また、外で人に噛み付いたりしては大変なので、触られることになれさせようと色々なところを触り続けた。
背中を触り、腹を触り、口を触り、尻尾を握った。
口や尻尾というのは犬にとってはあまり触られたくないところだ。
それでも触られても怒ったりすることがないようにと触り続けた。
暴れ続けたときは、ひっくりかえして拘束した。
がっつりと押さえつけた後、腹を撫でまくった。
犬にとっては、腹を出すというのは、自分の無防備な部分をさらけ出すことである。
本能とオレサマ気質双方があったのだろう。
彼は暴れ続けたが、腹を撫でながら、ずっと褒め続けた。
それなりに効果があったのだろう。
彼は何かをかじりたくなったら、おもちゃの木の枝をかじり、もよおしたら、所定の場所で高々と足を掲げ誇らしげに放尿するようになった。
そして、気が向いた時に腹を出して撫でろと要求するのである。
注:Gipsy Kings - Djobi, Djoba (Official Video)
https://www.youtube.com/watch?v=oxNK7VBizac
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