越痴園随筆

手作りおやつ

　昨今の物価高と円安で普段から買っていた犬のおやつが随分と高くなってしまった。

　気がつくと買い始めた頃の倍近くの値段だ。そして、自分たちの食べる肉の倍以上の値段でもある。

　どうにかしないといけないと考えはじめた。

　久しぶりに立ち寄った書店、手に取った本でフードドライヤーというものが紹介されていた。

　これを使えば、比較的簡単に干物やジャーキーを作れるらしい。

　そして、このフードドライヤーで犬用おやつを自作するのがお犬様の健康のためにも望ましいらしい。

　このフードドライヤー、数万円もする高いものは必要ないという。数千円のもので十分であるという一文は、「でもお高いんでしょう？」とあきらめかけていた私の心をがっつりとつかんだ。

　かつて干物や干し肉を作ろうとして何度も失敗をしていたこともあいまって、この魔法の機械に心を惹かれた。

　いつも使う通販サイトを見かけると、いくつも出てくる。

　その中でも評判の良さそうなものを一つ選ぶ。

　折しもブラックフライデーセールとやらの時期で普段よりも値引きをされていた。

　サクラや価格偽装がおこなわれていないことを確認して、私は注文をした。

　ほどなくして、届いたそれをいじってみる。

　無数の穴の開いたトレイのうえに何かをのせて、温度と時間を指定すると、下から温風をかけ続けてくれるらしい。

　ためしに軽く下茹でした安い肉を薄切りにして、乗せてみる。

　翌朝、たしかに水分がしっかり抜けたおやつができあがっていた（注）。

　電気代はそれなりにかかるだろうが、それを差し引いてもやはり割安だ。

　今度、自分たちのおやつやつまみも自作してもいいかもしれない。

　それにしても、さらに物価高になったら、どうしようかしら。

　山に狩りにでも行くしかないか。

注：下茹でしなくても薄く切れば全然大丈夫である。最近は肉を冷凍してから薄く削いで作っている。