コミュニケーションとトラウマ

 私は人とのコミュニケーションがあまり得意な方ではない。

 私の書いたホラ話をいくつか読んでくださっている方なら、薄々あるいははっきりと感づかれていることであろう。

 リアルで私を知っているものならば、「何をいまさら? 黒石がコミュ障なのは周知の事実だろ」といわれるような常識的事項である。


 ただ、最近ふと思い出したのだが、これには幼き日のトラウマめいたものが実はかかわっている。

 小学校低学年の頃、学校で友人関係に関する調査というものがあった。

 どのような文言でどのような質問があったか、ほとんどおぼえていない中、一つだけはっきりとおぼえているものがある。

 「あなたのしんゆうのなまえをかいてください」

 その頃の私は優等生で、学校の宿題はあっという間に終わらせるような感じであったが、これだけは机の前で夜遅くまでうんうんとうなったおぼえがある。

 EくんとTくんとは帰り道一緒に遊びながら帰っているし、帰宅後ランドセルを放り投げ再出撃したあとも夕方まで遊ぶ仲だ。

 でも、相手は僕のことを親友と思ってくれているのだろうか。

 

 たいしたものでもないのだから、適当に数人の名前を書いておけばよかったのだろう。

 結局書けずに「だれもいません」と書いた私は後日、呼び出されることになった。

 そのときに何を話したかは、もはやおぼえていない。

 

 何もかにもが大雑把な時代であったし、そもそも、先生はとても良い人だったことはしっかりとおぼえている。

 それでも、どこか、私の心の中に小さなトゲが刺さっているのだ。

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