第75話
「キャンディス皇女様はお優しいですね」
「え……?」
「普通、侍女とお菓子を食べようなどと思いませんわ」
「そうかもしれないけど、わたくしの部屋の中だし、みんなで食べた方が美味しいと思ったのよ」
「ありがとうございます。皇女様」
「大好きです、キャンディス皇女様」
二人の言葉にキャンディスは温かくなる胸を押さえた。
心臓がありえないくらいにドクドクと音を立てる。
この気持ちを二人に伝えたいと思い、キャンディスは口を開いた。
「わ、わたくしもエヴァとローズが大好き……」
「皇女様……!」
「本当ですか!?」
手を合わせて喜ぶエヴァとローズになんだか照れ臭くなってしまう。
「ず、ずっとそばにいたいとそう思っていなくもなくってよ!」
「「はい!」」
涙目で頷くエヴァとローズは今日も息がぴったりである。
二人と共にホワイト宮殿へと戻り、アルチュールとジャンヌと合流してからお菓子を食べたのだった。
記憶を取り戻してから数ヶ月経って、アルチュールはキャンディスに懐いて今ではすっかり本物の弟のようだ。
しかし最近、ある問題が起こる。
それはアルチュールからキャンディスへの愛が深すぎることだ。
何をするにもキャンディスファーストになってしまう。
しまいには「ぼくはキャンディスお姉様と結婚する」と言い出して「姉弟だから難しいわよ」と教えてあげると大号泣。
宥めるのに一日要したのは記憶に新しい。
「アルチュール殿下、皇女様に迷惑をかけてはいけません!」
「だって、ぼくはキャンディスお姉様とずっと一緒にいたいんだもんっ」
いつもいい子でわがままを言ったことのないアルチュール。
ジャンヌの言葉を聞いて泣いているアルチュールが可愛すぎてキュンとしっぱなしである。
ジャンヌは怒っていたが、キャンディスはアルチュールのふわふわしたイエローゴールドの髪を撫でていた。
懐かれるどころか、かなりのシスコンになりつつある。
だが愛され慣れていないキャンディスはどう対応していいかわからずにいたのだが、最近では気持ちの赴くまま可愛がっていた。
リュカはそんな二人の様子をのんびりと眺めていた。
そんなリュカはヴァロンタンによってマリアから離れたからなのか感情が豊かになりつつある。
毎日、影であんな風に言われ続ければ自信もなくなっていくに違いない。
教皇はマリアのことをヴァロンタンから報告を受けて謝罪した後に暫くブルー宮殿に出入りさせないように監視するそうだ。
マリアがリュカともう一度、話せるように頼むもリュカは拒否したため、暫くは距離を置くことになった。
だが教皇もリュカが医師に憧れていることに関しては納得するつもりは一切ないようだ。
しかしリュカはホワイト宮殿でいつも難しそうな本を読んでいる。
やはり夢を諦めることはできないだろう。
マクソンスはたまに廊下ですれ違うだけで関係に変化はない。
そしてラジヴィー公爵はキャンディスに面会を何度も何度も申し込んでいるそうだがキャンディスが拒否しているため会えていない。
母であるリサからの手紙の返信を待ちつつ、キャンディスは今日もバイオレット宮殿に向かう。
扉を開くとそこには──。
「ごきげんよう、皇帝陛下」
キャンディスを絶対に愛してはくれない父親、ヴァロンタンが気怠そうに手招きをする。
「…………来い」
その言葉にキャンディスはゴクリと唾を飲む。
いつものソファ、いつもの場所に腰掛けて緊張を解そうと深呼吸を繰り返す。
(わたくしは今日も試練に耐えてみせるわ!)
今日もキャンディスはいい皇女となり、帝国から出ることを目標としながら、ほっぺをむにむにとされるのだった。
第一部 end
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ここまで読んでくださりありがとうございます!
第二部、第三部と続く予定です(*'▽'*)
また第二部を書き終わり次第、投稿をはじめます。
よろしくお願いいたします。
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【第二部】
キャンディスママ編
下町編
マクソンス編
【第三部】
ルイーズ編
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このような予定でおります!
いつ公開するかはわかりませんので、気になる方はお気に入り登録はそのままでお願いいたします。
やきいもほくほくより
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