第43話
キャンディスは後ろにいるであろうエヴァとローズに問いかける。
「───エヴァッ、ローズッ、わたくしどうすればいいの!?どうしましょうっ」
「キャンディス皇女殿下……あの視線はかなりやばいですよ!」
「とっても嫌な予感がします……!」
「や、やっぱりそうよね。わたくしもそう思うわ」
キャンディスは頭を抱えて唸っていた。
今まで父から与えられたものは二つだけ。
首を斬られる、もしくは牢で罰を受けるのどちらかだけだ。
「なによ、もうっ!わたくしどうなるの……っ!」
「キャンディス皇女様、落ち着いてください!こうなったら当たって砕けろ大作戦で……っ」
「ローズのばかっ!たとえそうだとしてもキャンディス皇女様を不安にさせることを言わないの」
「だってエヴァ、あれはかなり怒っていたわ。まさに人を殺……むぐっ」
エヴァがローズの唇を手のひらで塞ぐ。
『殺される』
頭に浮かぶ文字にキャンディスは震える自分の腕を押さえた。
エヴァとローズの言葉にますます不安になったキャンディスは重たくなった頭を抱えた。
二度目の人生、はじめての大ピンチである。
何故、明日呼び出されたのかさっぱりわからないが何か理由があるに違いないと考え続けていた。
どうにかして死を回避したいと悩み続けて、その日は恐怖でまったく眠れなかった。
次の日、キャンディスはフラフラと重たい足取りで朝食に向かう。
真っ青な顔をしたキャンディスを見たアルチュールとジャンヌが心配そうに近づいてくる。
「皇女様、随分と顔色が悪いようですが……」
「キャンディスお姉様、どうしたのですか?」
アルチュールは昨日の本の感想を教えてくれようとしたのだろうか。
ジャンヌが本を数冊持っていた。
キャンディスを元気づけようとして抱きしめてくれたアルチュールの温もりに目を見開いた。
それと同時に初めて感じる安心感にキャンディスは不思議な気持ちになる。
アルチュールをギュッと抱きしめると、なんだかホッとする。
気持ちが落ち着いたキャンディスは口を開いた。
「アルチュール、ジャンヌ……ごきげんよう」
「キャンディスお姉様は具合が悪いのですか?大丈夫でしょうか?」
今にも泣きそうなアルチュールにキャンディスは「大丈夫よ」と声を掛けてふわふわの頭を撫でた。
本当はまったく大丈夫ではないのだが、アルチュールの前ではそう言うしかない。
そして昨日、ジャンヌに二人と別れたあとのことに何があったのかを話していく。
「皇帝陛下がそのようなことを……?」
「……そうなの。わたくし、今日で人生が終わるかもしれないわ。これが最後の食事になるのかも」
「どうしてそう思われるのですか?」
「わたくしはお父様に嫌われているもの」
「え……?」
恐怖でワナワナと震えているキャンディスにアルチュールが励ますように声をかけた。
「大丈夫です。キャンディスお姉様になにかあっても、ぼくが守りますからっ!」
「……アルチュール」
アルチュールの意外すぎる言葉にキャンディスは驚いていた。
それに前に彼を殺したことが急に申し訳なくなり、アルチュールを抱きしめる。
まだ生きていたい、死にたくない……そう思うと更に怖くなってしまう。
するとジャンヌも「皇帝陛下は皇女様に興味を持っているだけではないですか?」と言ってキャンディスを励まそうとしてくれたがキャンディスにはわかっているのだ。
(お父様がわたくしに興味を持ったのは兄弟全員をぶっ殺した後だけ……それ以外は)
二人に励まされながらキャンディスはサラダやフルーツをフォークでつついていた。
食欲がないことでシェフたちも心配そうだ。
アルチュールはジャンヌに本をたくさん読んでもらったらしく、リュカに文字を教えてもらったことも嬉しかったようで、また書庫に行きたいと話をしていた。
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