第15話 釈牙/シャガ
2人が広場に向かう直前。
「遥。これ、どないしようか?」
「どうするって、このまま行けばいいじゃん。せっかくだしさ」
「いや、それでええんやろか?このまま行ったら余計変な誤解されるんちゃうか?」
「大丈夫だよ。別にされたって構わないしそれに、この方が早く着く。私、予定より必ず早く着いてたいタイプだから」
「それは分かってるんやけど、いくらなんでもモンスターの背に乗った奴らが大量のモンスター引き連れて街に行くのはヤバいんちゃうかなと思ってな…」
2人は恐竜の様なモンスターの背に乗りながら街に向かっていて背後にはその群れ達が2人を追いかけている。
「このどこがヤバいのよ?」
「いや、ヤバいやろ!?どう見たって!私でもその位は分かるわ!どこのヤンキーが恐竜みたいな奴の上に乗って街に行くん?こんなの侵略かなんかと間違われるんちゃうか?」
「仕方ないでしょ。学園の能力を実験がてら使ってみようと思って口笛を吹いてみたらたくさん来ちゃったんだから。まだコントロールも出来ないしそもそもよく分からないし、しょうがないじゃん。それにこの子達に乗せてもらった方が早くつく訳だし。遅刻する訳には行かないんだから」
「でも、コイツらが勝手に街で暴れたらどうするねん?!そんな事が起きたらますます私達は悪者まっしぐらや。そんなんなったら最悪やろ!」
「大丈夫だよ。コントロールは出来ないけどこの子達はいい子だから。言われてない事はしないよ」
「どうしてそんなの言い切れるん!?」
「だってこの子達にとって私達は飼主みたいなものだってヤヨイが言ってたでしょ。それに実際この子達は私達に懐いてるみたいだしそこら辺は大丈夫よ。そうだよね?ディーノ?」
「グワァーーーッ!!」
遥の問いかけに答えるように叫んで返事をする。
「ほらね?大丈夫だって」
「いつの間に名前をつけたん……大丈夫かいな、ホンマに」
「信じてあげなきゃこの子達も可哀想じゃん。この子達も普段は私達と同じでモンスターって理由だけできっと嫌われてる。理解をしようとしないままね。その気持ちが私達なら分かるでしょ?それにエプロンが乗ってるその子なんかめっちゃ可愛い顔してるよー。多分私達と同じ女の子ね。だったら尚更信じてあげなよ。同姓どうしなんだからさ」
「……そんな事言われてもな、」
そうするとエプロンを背に乗せたモンスターが走りながら器用に顔を上げてエプロンに顔を見せる。
「ぐっ!……確かによく見たら可愛いな、この子」
「でしょ?だから信じてあげなよ」
「でもええんやろうか?可愛いって理由だけで信じても。一応モンスターやし」
「十分でしょ。それだけあれば。好きなところ、良いところ、なんでもいい。1つでも信じられるところがあるならそれだけで信じるに値すると私は思うけど。……私はいつもそうやってるから」
「……そうやな!私が信じてる遥がこれだけ言ってるんやから私も私でこの子を信じてみるわ!最悪の事態なんか起きやせえへん!私はそう信じる。ってな訳で頼むで、紅生姜!」
「キュワァーーーッ!!」
紅生姜はとても喜んでいるようだ。
「ふふっ。何よ、その名前。ピンクでも赤でもないのに紅生姜って……」
「ええやろ。紅生姜。この子にピッタリやろ?」
「流石、センス抜群ね!」
「やろ!!遥ならこのセンスが分かってくれると思っとったわ」
遥を乗せたディーノ。エプロンを乗せた紅生姜。
そしてその仲間達はぐんぐんとスピードを上げて森を抜け広場に向かって行った。
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