第11話 師以真似呀/シーマニア
「…私には見えるんです。物の情報も人の強さも全部私が知りたい事と思った事はなんでも…」
「それって鑑定ってやつか?」
「……やっぱり。皆さんなら知ってると思ってました」
「なんでそう思ったの?」
「……なんとなくです。直勘ですよ。直勘」
「で、私達の何が見えたん?」
「正確的には見えたのは皆さんではありません」
「は?」
「これも変なんですよ。私も様々な人達を見てきましたが皆さんのような人達は初めて。強さによって全ての情報を閲覧できなかった経験はありますけど、皆さんはそれとも違う。名前や年齢などの基本の情報すら閲覧する事が出来ないんです。まるでそもそも存在しないみたいに。こんなの普通はあり得ないんです」
「それなら私達が強いかどうかは分からないじゃない。なのになんでそう思ったの?私達の話を聞いたから?」
「見えないからこそですよ。私の能力でも見る事は出来なかった。それってそれだけ皆さんが規格外でヤバい存在って事です。これをどう考えるかは人によって違うんでしょうけど私はプラスに取ることにしました。それに」
「それに?」
「私も自分の目には自信があるんです。能力的にも直勘的にもね」
するとエプロンが笑いだす。
「ハハハハッ!遥。やっぱ私ヤヨイのこと気に入ったわ。私の目に狂いは無かったっちゅうこっちゃ!」
「良かったね。2人とも気が合って。でも、喜ぶ前にまだ肝心の事を聞いてない。私達が見えてないならアナタの目には何が見えたの」
「私に見えたのは皆さんではなくこの建物です」
「学校の事か?」
「ええ。この建物、この世界の建造物とは全く違う事が1つだけあります。建物のデザインや作り方とは別に1つだけあるんです。この世界じゃ絶対にあり得ないことがこの建物には起きてる。それを私は知ってしまった。
…さっきエプロンさんが私に仰いましたよね?どうして私達に付いてきようとしてるのかって。さっきは嘘つきました。こんな楽しいこと知れたのに怖い、怪しいからって私が逃げるわけがない。それだけです」
「そんなにアナタを喜ばせたこの学校にある物ってなんなの?」
「スキルですよ」
「スキル?」
「ええ。本来スキルは人間やモンスター、生物にしか存在しない。物や建造物に魔力を込めて魔法を発動するように仕掛けた魔道具は存在しますがスキルがついた無機物は存在しないんです。なのにこの建物にはそれが存在している。人間の皆さんには存在していなのに。不思議です」
「なあ?それって凄い事なんやろ?」
「はい。めちゃくちゃ凄いことです」
「なら、それってどんな能力なん?教えてよ?」
「知りたいですか?遥さんも」
「一応」
「では改めて確認しながら説明致しましょう」
ヤヨイは屋上から見える学校全体を体を動かしながら舐め回すようにジロジロと見渡す。
そして、
「確認完了。では上から順番に。スキル名は……これなんて読むんです?」
「!?見えてない私達が読めるわけないやろ!」
「ヤヨイこれ使って」
遥はヤヨイが開いてあるスマホを渡す。
「ありがとうございます」
ヤヨイは何故か慣れた手つきでスマホをなぞりながら文字を書いていく。
「遥のスマホまだ生きてたんやな。私のスマホはもう電池切れであかんわー」
「あれ?ケーブル持ってないの?」
「持ってはおるけど……異世界なんやから電気なんか通ってへんやろ」
「通ってるよ。電気」
「ええっ!嘘やろ!ここ異世界やのになんで電気があんねん!ここそんな発達した国ちゃうやろ!?」
「国全体は電気なんか存在しないみたいだけどこの学校では存在するんじゃない?何故か都合がいいことにね。異世界なんだからそういうのもありでしょ」
「はぁーー。驚いたわー。めっちゃ驚いた。なんで今まで私気づかへんかったんやろ?」
「本当よ。夜になったら部室内も灯がついてたのにね」
「ホンマやな。慣れって恐ろしいわ……」
「書けましたーっ!」
「よし、見せてみ?」
遙とエプロンが書かれた文字を見る。
「コレって……読み方はアレやろ?」
「うん。久々にこの表記の仕方で見たけどね。間違いないでしょ」
書いてあった文字は、「夜露死苦」であった。
「ヤヨイええか?これはな、よろしくって読むねん」
「え、宜しくってこんな文字じゃなかったですよね?」
「昔のヤンキーはこういうメチャクチャな表記の仕方をするのが流行りで好きだったのよ。今のヤンキーはあんまり使わないけどね。でも私は好きよ」
「で、この夜露死苦に何の意味があんの?」
「これはですね…凄いですよ。正直、私も信じられない事が起きてたんだな〜って心底思いました」
「どういう事や?早く説明しい」
「夜露死苦は世界の理そのものを変え、常識を一変するスキルです」
「はぁあ!!?」
「……えらい物騒な力を持った学校だったのね。ここ」
「しかも既にこのスキルは発動済みです。この世界に来てから皆さん不思議だった事はありませんか?例えば、言葉とか」
「あ!確かに。私も不思議には思ってたん。世界が違うのに当たり前に私達の国の言葉が使えてる事」
「元々使っている言語が同じだったんじゃなくて?」
「いいえそれは違います。……違ったと思います。多分」
「はっきりせえよ。自分の世界の言葉やろ?」
「そんな事言われても思い出せないんですよ!この事を知って初めて疑問に思ったんですから。こんな事知るまでは日本語がこの国の言語だと思ってたんですからね。でも、思い返しててみると最初は違った気がするんですよね。なんとなくその言葉が当たり前になっていた筈なのに気づいたらこっちの方が普通になってるんですから」
「どういうこっちゃ。いろいろワードが多すぎてよく分からん」
「つまり要約すると、私達がこの世界に来た事で元々の言語から日本語がこの世界の共通言語に切り替わったって事ね。しかも誰も気づかないうちに」
「遥はこの説明で分かったんかいな!」
「さすがは遥さんですね。その解釈で問題ありません」
「……でも、それが本当ならこれ相当なチート能力やない?そうやんな?」
「ええ。間違いなく。ただ、ざっと見た感じこの能力は皆さんがこの世界で困らないようにする為の基本的な補助でしかないみたいなんですよね。この能力自体他に何か応用が出来たりはしなさそうなので」
「じゃあ、その能力を使って私達の好きなように世界を変えたりは出来ないって事ね」
「ええ。恐らく」
「なんや!つまらんなぁ!」
「いやいや、十分強力な能力ですって!この能力がなければ皆さんはこの国の人とコミニュケーションすらまともにとれないんですから。いくら強い力を持っていてもその世界の言語や知識を入手出来なければ生き残る事すら難しいと思いません?」
「……それを言われちゃ敵わんわー。確かに実際、この能力のお陰でこうやってヤヨイとも話せてるんやからな」
「そういう事です。分かっていただけてなによりです」
「ちなみに他は?まだあるんでしょ?」
「はい。それでは次にいきますよ。次は……コレです!」
再び書いた文字を2人に見せる。
「え?ちょっとー!どうしたん?いきなり!?こんな事言ってーー?!」
「は?え!?」
「いきなり告白なんて照れるわーーー」
「え、そんな事私何も言ってませんよ」
「言ったやろ。ってか書いてあるし」
「エプロン…そろそろ弄るのやめてあげなよ。文字が読めないからこうして書いて伝えてるくれてるんだからさ」
「そんなん分かってるよ。でも、ちょっと面白いかなーと思ってやっただけよ。ホンマは分かってると思うねんけど……」
「なんか言いました?」
「いーやなにも」
「それならそろそろ教えてくださいよ。この文字なんて読むんですか?これ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます