第17話

翌日のことだった。


「昨日の今日でこれか」


朝起きたらとんでもない事になっていた。


「ぴゅぎぃぃぃぃぃ」


俺の横でスライムも驚いていた。


窓から見える景色がとんでもない事になっていた。


視界いっぱいに広がるダンジョン!


「根元を潰さないとダメだなやっぱり。このままじゃ椎奈まで危険になるじゃないか」


まぁその事は桐崎のやつに伝えているし近日中にどうにかしてくれるだろう。


いや。


(本当にどうにかしてくれるか?)


「仕方ない。自分でやるか」


少し悩んでから俺はシロに連絡をする事にした。


俺:事情が変わった。放課後念の為話がしたい


シロ:そんなこと言うようなキャラだっけ?!カオルちゃん?!イメージと違うんだけど?!


俺:放課後、昨日のファミレスで待ってる。終わったら来い


シロ:すっごい強引になったね♡でも行っちゃう!


スマホをしまって俺は服を着替えると部屋を出た。


玄関で靴を履いてると父さんが話しかけてきた。


「たいへんなことになってるなぁ薫」

「そうだね」

「人手不足みたいだし父さんも冒険者になろうかなぁ?ははは、今なら稼げるかもなぁ」


そんなことを言ってるが俺は答えてやる。


「父さん、冒険者なんてそんないいもんじゃないよ」


そう言って俺は玄関の扉に手をかけた。


ボケっとした顔の父さんが聞いてくる。


「なぁ、薫。お前そんなキャラだっけ?」


その言葉には答えず俺は家を後にする。


【重力操作】


重力を軽減して俺は屋根の上を移動しながら学校に向かっていくことにした。


いつもであればこんなことはしないんだけど、リハビリが必要そうだからやっておく。


教室に入るといつもと違う光景が見えた。


女子たちが集まって話をしていた。


で、俺が入ってきたことに気付いた竹本が近寄ってきた。


「おはよ、西条くん」

「なにを話し合ってる?」

「それがね。また強キャラさんが出たんだって。それでこのダンジョン大量発生の原因が分かってさ。桐崎さんがこれから解決に向かうんだって。それで盛り上がってるの」

「へぇ」


だいたい把握したので席に向かうと水野が話しかけてきた。


「ねぇ、西条。私達もダンジョンに向かわないか?」

「水野はなにができる?」


そう聞き返すと水野は言った。


「あれ、行くの?」

「放課後になっても状況が変わらなかったらな」


まぁ俺の予想で行くなら状況は変わらないから行くことになるだろうが。


群生は早めに手を打たないと面倒なことになる。


嫌だ面倒だと言ってるうちに大量発生してしまうからな。


異世界で実際にやらかした前例付きだ。


今日は授業を受けながら俺はとある事をしていた。


【錬金術】


魔力を素材へと変化させる。


ぐぐぐっ。


魔力を外に出しながら少し工夫を加えれば


【クリスタルの結晶を入手しました】


グッ。


さらに力を込めて結晶の形を変化させていく。


【クリスタルブレイドを入手しました】


このように魔力から武器を作ることができる。


異世界で教えてもらったものだ。


しかし


(ふぅ、)


魔力を膨大に使うという弱点がある。


回復にはおそらく放課後までかかる。


なので放課後までは大人しくしておこう。


それだけ回復に時間がかかるから戦闘の度に使えるような能力でもない。


ぎっ。


背もたれにもたれて休憩をする。

ちょうど授業の課題も終わった。


俺は窓際の席なのでクリスタルブレイドは壁に立てかけておく。


「西条、もう終わったのか?」


いつものように先生が声をかけてきたので頷いた。


すると前の席の高橋さんが反応を示した。

今更気付いたがこの人俺の前の席だったんだな。


「ところで西条くん。それはなんなんですか?」


俺のクリスタルブレイドに目をやる高橋さん。


「見たことない宝石ですねー」


誰も許可を出していないのに触ろうとする高橋。


「触るな」


その腕を掴んで止める。


びくっ!

手を引っこめる高橋。


「あ、あはは、ごめんなさい」


謝ってくる高橋。


そのとき先生が口を開いた。


「おいおい、西条。女社会は怖いぞ?優しくしておいた方がいいんじゃないか。ていうかなぁ、お前なんでそんな物騒なもん持ち歩いてるんだ?」

「必要になりそうだからですよ」

「必要?技術科でしょ?ダンジョンには行かないんじゃないのか?」


そんなことを言ってくる先生に聞いた。


「先生。技術科でもダンジョンには行けますよね?」

「もちろん行けるが、ダンジョンに行きたいヤツらはそもそも攻略科に行ってる。なに、編入したいとか?」

「まさか」


そう言った時だった。


ボカーン。


窓の外から音。


近場のダンジョンの方だった。


ダンジョンの屋上に穴が空いてた。


「なに?!」


高橋さんや他の生徒達も窓の外を見に来る。


「あ、あれやばいんじゃないんですか?」


高橋さんが先生に聞いていた。


「あ、あのなぁ。高橋。あのダンジョンは学校に近いということもあって、有名な警備会社が警備してるはずだ。仮にモンスターが出てきたとしても」

「先生、それフラグって言うんですよ」


高橋がそう言った時穴からヌッと影が見える。


「んひゃっ!なんか出てきた!」

「え、ま、待ってあれドラゴンじゃない?!」


女子生徒がそう言った時だった。


そのモンスターは空を飛んだ。

そして、こちらに向かってくる。


「ウガァァアァァァ!!!!」


口を開けてエネルギーを溜めていた。


そして、ドッ!


エネルギーは無数の炎の弾となって飛び出してきた。


女子が騒ぐ。


「え?!こっち向かってきてるよ!どうするの?あれ、先生。大丈夫なの?!」

「すまん。分からない。とりあえず職員室に……」

「そんな場合なんですか?!」


着弾まで数秒ってところに見える。

暇なんてない。


(やむを得ないな)


呟いた。


【バリア】


ブン!


炎の弾の進路方向にバリアを出した。


プシュゥ。


「炎が消えた!誰かが消してくれたんだ!」

「でも、誰が?!そもそも本体が残ってるよ!」

「本体はこっち向かってきてるし、やばいよー!」


俺はクリスタルブレイドを手に取った。


「西条くん?」


高橋が見てきたが何も答えずに俺は落下防止の柵に手を伸ばした。


「え?!西条くん?!なんで、手がすり抜けてる!」

「え?マジシャン?!何これ!」


そのまま全身をすり抜けさせた俺は空中に立った。


「え?!どうなってるの?!」


先生が聞いてくる。


「さ、西条大丈夫?!」


何も答えずに俺はクリスタルブレイドを振った。


遥か遠くでドラゴンの首が切断された。


そして、死体はすぐに消えていく。


「な、なにが起きたの?」


高橋が聞いてきたけど、俺はそのまま教室に戻った。


クリスタルブレイドには血がついてる。


「な、なんで血?今のを西条くんがやったんですか?」


高橋にはなにも答えずに俺は席に座った。

今までの事を説明しても理解できないだろうからだ。


ザワザワ。

女子たちが騒ぎ始める。


「どうしてこんなにすごいのに技術科なの?」

「え?意味分かんない」


そんな声が聞こえてくる中俺は先生に言った。


「授業やらないんですか?」

「あ、いや、い、今の後でよくそんな事言えるなぁ、西条は」

「なにか、特別なことをしたつもりは無いですけど」


そう言うと女子から歓声が上がったが。


その時だった。


校内放送。


『臨時休校のお知らせ。生徒の皆さんはたいへん危険ですので今すぐに下校してください。各地のダンジョンから多くのモンスターが出現しようとしています』


次の瞬間先生は言った。


「ほいっ!聞いた通り、下校準備よろしくっ!先生も責任問題とか嫌だからな!」

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