第16話 再会

家に帰ると食事をするために椅子に座った。


テレビはついており、そこから金肉の声が聞こえてくる。


「あっ。同じ学校の金肉くんだー。話したことないけど」


椎奈はそう言ってた。


それを聞いた父さんも話題に乗っかる。


「金肉くんって子は凄いみたいだなー」

「お兄ちゃんの方がすごいもん!金肉くんを投げ飛ばしたんだって!」

「テレビで見てもすごいガタイだぞ?薫があれを投げ飛ばしたのか?まさか信じられないなー」


無視して食事を進めているとテレビのシーンは変わった。


どうやら金肉といっしょにダンジョンに行ってる奴の話に変わったようだが。


声を聞いた瞬間俺はテレビに目をやった。


「こんばんは」

「きれーな女の人ー」


声を聞いて椎奈も画面を見てた。


俺はテレビに映る顔を見てはしを落とした。

父さんが聞いてくる。


「薫、はし落としたぞ」

「……」


目が離せなかった。

俺の知っている人間だったからだ。


白い髪の毛を腰まで伸ばした女。


「やっほー。新見 シロでーっす。異世界から帰ってきましたっ!」


シロはそう言ってからこう続けた。


「カオルちゃん?生きてるよね?見てる?見てるならさ。電話してよ。ぜろはち……」


そう言って自分の電話番号を読み上げたバカ。


(なんのつもりだ、こいつ)


一応スマホを取り出してメモっておいた。


新見 シロ。

俺と共に異世界に召喚された奴だ。


俺は特段特別な人間ではなかった。

ランダムに選ばれた勇者の1人であり、10人ほどいた中の一人でしか無かった。


そして、シロはそのうちの一人だった。

俺たちは共に行動した。


そして、同タイミングで日本に返された。

だが、なんのつもりだこいつ。


「まさか、知ってる子か?薫」


父さんに聞かれて俺は何も答えずとりあえずメッセージを送ることにした。


ライブ放送のようで、向こうはインタビューされてるにも関わらず電話を取って俺に電話してきた。


「お、お兄ちゃん?誰あの人!あんな可愛い人と知り合いなの?!」


そう聞かれたけど余裕が無い。

とりあえず電話に出た。


「やっほーカオルちゃん」

「俺の名前を出すなバカ」

「あ、ごめん。ほんとにごめん。嫌いにならないで」

「俺については黙ってろ」


そう言って電話を切った。


「今から電話番号変えマース」


シロはそう言ってカメラ外に消えた。

インタビューワーも戸惑っているようで可哀想だ。


それから俺は何も無かったように食事を再開した。


父さんが聞いてくる。


「あれは彼女か?!薫?!ひょっとしてか?!」

「お兄ちゃん?!彼女なの?!」


声が聞こえてる訳ないだろうけど、最後に画面外からシロはこう言った。


「ふふん。待っててね、ダーリン♡」


リモコンを持ってテレビを消した。


「聞いた?お父さん」

「聞いたぞ椎奈っ!」


今まで黙ってた母さんも含めて俺を見てきた。


食事を済ませて俺は立ち上がって部屋に逃げることにした。


その後シロから別の電話番号で電話が来た。


ファミレスに呼び出されたので向かってみることにした。


夜の8時くらいだったので特に何か言われることも無くファミレスにこれた。


シロからのメッセージを頼りに席を探すとすぐに見つかった。

4人組の座席にシロと金肉が座っていた。


現れた俺を見てビビっている金肉。


「西条……まじか」

「なに?知り合い?」


シロはそう聞いてきたので答える。


「同じ学校だよ」


シロは自分の隣に座るように言ったので座ることにした。


「会いたかったよダーリン♡」


腕に抱きついてくる。


それを見て金肉は口を開いた。


「お前けっこうモテるんだな」

「ダーリンモテるの?向こうじゃ全然モテなかったのに」

「学校でけっこうモテモテっぽいぞ?」


話をさえぎって俺はシロに聞いた。


「なんのために呼び出した?」

「ダーリンに会いたかったのと、パーティ勧誘。ね、また一緒にダンジョン行こうよ」


そう言われて俺は首を横に振った。


「もう、行きたくない」

「そうなんだ」

「話はそれだけか?じゃあな」


帰ろうとすると俺の腕を掴んでくるシロ。


そして、顔を赤くして言ってくる。


「待って、今日はひとりにしないで」


その言葉を聞いて金肉は叫んだ。


「お幸せにぃぃぃぃぃぃぃ!!!うわああぁぁぁあ!!!」


金を置いてファミレスを出ていった。


その後俺たちは会計を済ましてダンジョン前にやってきた。


その時に聞いてみた。


「シロはダンジョンに潜ってるのか?」

「うん。帰ってきたらダンジョンができてたから潜ったみた。中のモンスターは雑魚ばっかりー。でさぁ、いろんな人に声かけたんだよね、そん中に最強の冒険者がいたの」


そう言われて俺はまさかと思った。


「もうすぐ来るはず」


シロがそう言った時だった。


「じんぐるべーるじんぐるべーる」


声が聞こえてそっちを向くと桐崎がいた。


んで、真面目な顔で俺にこう聞いてきた。


「鈴は鳴るものなのか、鳴らすものなのかどっちだと思う?」

「知らねぇよ」


サンタのコスプレしてる桐崎が近付いてきた。


「今からダンジョンに入りたいと思いますダーリン」

「俺の言葉聞いてた?今はもう入ってないんだよ」

「妹ちゃんのために頑張って」


そう言いながらダンジョンの中に入っていくシロ。

桐崎も着いていく。


このまま帰ってもいいんだけど、まぁ聞きたいことはあるからついて行くか。


シロが話しかけてきた。


「ダーリン。この世界のダンジョンだけどさぁ。壊さないとやばいっぽいよ」

「なんで?」

「奴が来る」

「……」


俺たちの間では奴で通じる。

魔王の事だ。


「理由があって今は来れないみたいだけどもっとダンジョンが出現するとこっちに来れるみたい。だから潰さないとやばい」


その言葉を聞いて俺は無言で進んで行った。


雑魚を蹴散らし続けて進むとやがてボス部屋の前に着いた。


ボス部屋を開けると中には巨大な蜘蛛がいた。


「シャアァァァ……」


スっ。

銃を抜いて放った。


ブシャッ!


潰れて絶命する蜘蛛。


桐崎が呟いた。


「相変わらず凄いですね強キャラさんは。私たちがなんかする暇もないです」


その後ダンジョンは消滅して俺たちはダンジョン前に戻されていた。


しかし、その間にもダンジョンは増えていた。


通常こんな速度でダンジョンが増えることは無い。

となると。


「群生ダンジョンかこれ」

「ご名答」


シロはそう言って聞いてきた。


「本体はどこにあるでしょう?」

「知らねぇ。興味無いし」


桐崎が聞いてきた。


「強キャラさん群生ダンジョンってなんですか?」

「群生ダンジョンは今みたいに大量に生えてくるダンジョンのことを意味してる。このタイプには本体があるんだよ、それを潰さない限りは無限に湧いてくる」


そう言うと桐崎は言った。


「そういえば、どこかに巨大な地下ダンジョンがあるって聞きましたなぁ」

「攻略よろしくな」


俺はそう言って帰り始めた。


シロだけが着いてきた。


「なんであの人サンタのコスプレしてるのかな?」

「知らないよ」


しかし俺と同じ異世界からの帰還者か。


こいつが面倒なことをしないように手を打っておこうか。


「俺はもうダンジョンを積極的に攻略するつもりはない」


じーっと俺を見てくるシロ。


「異世界じゃあんなに積極的だったのに、どうしてそんなんなっちゃったのダーリン」

「それと。俺はお前のダーリンでもなんでもない。次にそれで呼んだら、無視する」

「え?無視する程度で許してくれるの?あ、でも無視はやだなー。んじゃ異世界で呼んでたカオルちゃんでいこうかなー」


その辺の呼び方は好きにさせることにした。


どうせ、頻繁に会うやつでもないし。

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