第14話 隠しきれないオーラ

翌日から男子たちの殆どが学校にこなくなった。

男子の殆どが冒険者になったからだ。


我がクラスで学校に残ったのは俺くらいのものだった。


それでも授業は普通に進行していく。


先生が口を開いた。


「男子で残ったの西条だけか。他の男子とは違う選択肢を選ぶなんて、強キャラ感が出ているな」

「最近話題ですよねー。強キャラさんって人」


先生の言葉に答えたのはクラスのマドンナである高橋さんだった。


ふたりが楽しそうに会話してた。


「そうだね。強キャラさんって言えばさ、最近先生思うんだぁ」

「なにを思うんですか?」

「強キャラさんって人ひょっとして西条のことじゃないかって」


全員の視線が俺に向かってきた。


「……」


文字通り全員が俺を見ていた。


ザワザワ。

女子たちが会話する。


「まさか」

「え?でもありえそうじゃない?だって西条くん強キャラ感が隠しきれてないよ」


先生が慌ててた。


「じょ、冗談だって。西条が強キャラさんなわけないだろ?西条はたしかに強キャラ感出てるけど、じゃあなんで学校に残るのさ」


高橋さんが頷いた。


「そうですよね。ほんとに西条くんが強キャラさんならダンジョンに行けばいいし」


俺から視線が外れた。


先生は前回の小テストの話をした。


「あー、そうそう。小テスト返すよ。それとさ謝らないといけないことがある。先生間違えて授業でやってないところテストに出しちゃった。てへっ。だから実質9点は満点だよ。名前呼ばれたら取りに来て」


俺はテストを受け取りにいった。


先生が俺の用紙を見て目を見開いた。


「はっ?!10点?!満点?!」


また全員が俺を見た。


「授業でやってないところあったのに?」

「予習してただけじゃないのー?」


そんな声が聞こえるが、先生は言った。


「あ、あのさ。それなんだけど、教科書に載ってないんだよねそこの範囲。だからさ」


俺を恐れるような目で先生が見てきた。


「なんで正解してるの?西条」


俺は答えた。


「やだなぁ。先生。ネットで見ただけですよ。そんなに驚くことでは無いのでは」


そう言いながら戻った。


その後も授業が終わるまで全員が俺をチラチラ見ていた。


休み時間になった。


俺は銃をいじっていた。

彼女は将来冒険者になりたいって言ってた。


だから俺としては可能な限りサポートするつもりだ。


自分がダンジョンに行くのは望ましくないけど、椎奈の夢であるなら応援したいと思う。


で、椎奈は武器の整備を俺に頼みたいって言ってたからそのための努力って訳だ。


そうして弄ってると水野が話しかけてきた。


「西条、ご飯」

「屋上。終わったら俺も行くから」


水野が教室を出ていった。


俺も椅子から立ち上がって教室を出ていった。


んで、屋上にくると水野の他に先客がいた。


「西条くん、待ってたよ」


高橋さんだった。


こんなところに絶対来ない人だ。

俺と水野の会話を聞いて来たってとこだと思う。


「俺になんか用?」

「うん」


高橋は聞いてきた。


「強キャラさんって西条くんなの?」

「だとしたら?」

「私強キャラさんのファンだから」


そう言うと俺の前に来てこう言った。


「配信に映ったのはちょっとだったけど、ガチ恋してしまったの」

「ふーん」


そう言いながら俺は無視して食事を始めた。

それを見て高橋さんは言った。


「そのそっけない反応。やっぱり西条くんが強キャラさんっぽいよね」


そう言って横に座ってくる高橋さん。


いろいろと話しかけてきたけどほとんど返事をすることは無かった。


俺は高橋さんにいっさいの興味が無いからだ。

しかし


「この徹底的な無視、ほんとに強キャラっぽいよね」


あまりいい結果では終わらなかったようだった。


そのとき、ガチャっ。


「おまたせー」


水野が入ってきた。


高橋さんに目をやったけど、俺の横に座ってきた。

それから高橋さんはもう一度口を開いた。


「ふたりとも。クリスマス会の話は聞いてないよね?」

「聞いてない」


学校側でのイベントだろうか?

そう思っていたら高橋さんは言った。


「今年はクラスでクリスマス会をやるんだって。」

「まさか、それに出ろ、とでも?」

「うん!」


高橋さんは答えた。


「このクラスで過ごすのも最後なわけじゃん。だからさ」

「不参加って伝えといて。強制でもないんでしょ?」

「強制じゃないけどさ」


苦笑いしてる高橋さん。

そのとき、水野のスマホから声が聞こえてきた。


『ご覧下さい。ダンジョン上空からワイバーンの群れが解き放たれました!』


その声に釣られて俺はぐるっと周りを見た。

すると、遠くの方に翼の生えたなにかが飛んでいるのが見えた。


「あれか」


そいつらの何匹かはこっちに向かってきてた。


このままでは学校まで到達するだろう。


「ケツ拭いくらいはしてやるよ」


呟きながら俺は銃を構えて撃った。


撃ち抜かれたワイバーンは飛行をやめて落ちていく。


「終わりだな」


終わったので椅子に座り直した。


『ご覧下さい!見ましたか?!突如ワイバーンの何匹かが落下し始めました。いったい何者がやったのでしょうか?!周りを見ていますが誰もいません!』


水野のスマホから声が聞こえる。


ボケーッと俺を見てくる高橋さん。


「俺なんかに付き合っててもいいことないよ。俺と喋ってても楽しくないでしょ?」


そう聞いてみると高橋さんはスマホを見せてきた。



【強キャラさんについて語るスレ part1】


798 名無し

強キャラさんのあの闇抱えてそうな感じほんとすこ

素人にあの雰囲気は出せない


799 名無し

強キャラさんのストーリー終盤で裏切りそうな雰囲気もすこっ!

あの悪役みたいな人に裏切られたら許しちゃいそうw


800 名無し

桐崎が苦戦してるところにいきなり出てきて「事情が変わった」からの仲間入り、圧倒的実力でボス蹂躙の流れが完璧すぎた





これを見せてから高橋さんは言った。


「強キャラさんは人気者だよ?それに似た雰囲気の西条くんと話してるんだから楽しいに決まってるよ」


その言葉を聞いて思った。


高橋さんには何を言っても無駄かもな。

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