第12話 噂


翌日から学校に登校することができるようになった。


俺はぐっすり寝てから登校してきた。


もうアドレナリンとかも出ない感じ。

寝る前に動いても割とサクッと寝れるくらい心というものが壊れているようだ。


教室に入り窓の外を見ていたら声をかけられた。


「おはよう西条くん」


竹本だった。

そのまま会話を続ける。


「昨日の桐崎さんの配信見た?」

「誰それ。知らない人だな」

「嘘だー。じゃあ昨日何してたの?」

「寝てた」


そう言うと竹本は桐崎について説明を始めた。


誰も聞いてないんだが勝手に説明してた。


「って感じですっごい、冒険者なの」

「へー」


全部知ってる事だった。


「でさ、その配信でその桐崎さんよりもめっちゃ強い強キャラさんって人が出てきたの!みんなその話してるよ!強キャラさんすごいって」


竹本はテンションが上がり始めていた。


「で、なんでその話を俺にするわけ?」

「私西条くんしか友達いないもん」


そんな竹本の悲しい話を聞きながら俺は一時間目の授業の用意を始める。


「西条くんって授業聞いてるの?」

「聞いてない」

「だよね。授業中見た時いっつも下向いて寝てるもん」

「ところで、どうして君は俺の事を授業中にチラチラ見てるんだ?」

「そ、それはその〜」


急にテンパる竹本。


そこで話題を変えてきた。


「あ、あのさ西条くん授業は聞かないといけないと思うんだ」

「聞くも聞かないも俺の勝手だろ」


そう言うと竹本は言った。


「おっぱいサンドなんだよね」

「まだ引っ張るのかそのネタ」


そう言うと竹本は言った。


「おっぱいサンドのせいでそんなに夢も希望もないような廃人になっちゃったんだよね?西条くんは」


竹本の中では俺はどうやら廃人という扱いらしい。


「それじゃ生きてるって言わないよ」

「何が言いたい?」


そう聞くと竹本は言った。


「放課後おっぱいサンドしてあげるから開けといて。私はもう覚悟ガンギマリだから」

「……はっ?」


あまりに予想外のことを言われてフリーズした。


そのときチャイムが鳴る。


「予定、空けといてね?」


そう言って竹本は席に戻ってった。


(あいつマジでするつもりか?)


前々から変わったヤツだとは思っていたけど、まさか、な。


一時間目の授業が始まると先生が【コア】の話を始めた。


「みんなは昨日の桐崎さんの配信見た?」

「見ました」


答えたのは石野だった。


だが先生は俺に目を向けてきた。

そこでなんで俺を見る。


「見た?」

「みてませんよ」

「だよねー。だと思った。君がこのクラスで一番やる気を感じないからねー。でもー、小テストとか一番点数高いの君なんだよねー」


その言葉を聞いて教室が騒がしくなった。


「え?!西条くんが?!」

「あんなやる気なさそうなのに、勉強だけはしてるんだなぁ」


先生はそれからまた関係ない話を始めた。


「ついでに英語もペラペラらしいよ」


英語が話せる理由はあれだ。

異世界の言語がなぜか英語だったからだ。


そんな場所に2年もいたら話せるようになった。


「えー、英語話せるんだー、素敵ー!」

「こんど西条くんに教えてもらおうかな」


そんな女子たちの会話が聞こえてくる。


そこで先生は脱線に気付いたようで話を戻し始めた。


「そうそう。話を戻すけどさ、どうやらコアについてだけど、壊れるらしいんだよね。桐崎さんの配信に出てきた強キャラさんによると」


先生が強キャラの単語を出すと授業中なのに声が出てた。


「強キャラさんすごかったよね!」

「人生3週目くらいだよねあの人」

「あの人なんなんだろうねー?政府ですら把握してないようなことも知ってそうだし」


そんな会話を聞いて先生は言った。


「そういうところも何もかも分かってないから【強キャラさん】なんだろうね。おっとまた脱線しかけた。で、コアに話を戻すけど」


先生はこう続けた。


「みんなには武器の組み立てじゃなくて整備についても学んでいってもらおうと思う」


内心でため息を吐いた。


(苦手なんだよなぁ、整備)


整備だけじゃなく、こういう技術系のがそもそも苦手だけどね。


先生は武器のレプリカを渡してきた。


「マニュアルも一緒に同封されてるからさ、じゃあ、とりあえず分解してみよっか」


そうして流れてきたのは銃だった。


(昨日と同じ型か)


また懐かしさが出てきた。


「くそ……」


小さく呟いて分解に取り掛かった。


ドライバーでネジ外してバネ外してってやりながら分解が終わった。


寝ようかと思ってたら。


俺の頬に何かがあたった。

横から何かが飛んできてた。


横を見ると女の子と目が合った。


「ごめん。当たった?」


そう聞いてくるのはクール系女子の水野さんだった。

首にチョーカーついてる、いかにもなやつ。


「当たったけど、気にしなくていいよ」

「ごめん」


謝りながら水野さんは飛んだバネを探してた。

俺には関係の無いことなので無視しようかと思ったけど、水野さんが話しかけてきた。


「え?もう分解終わったの?」

「それが?もうみんな終わってるでしょ?」


そう言って周りを見たが誰も終わってない様子だった。


「やるじゃん」


じゃっかん頬を緩ませてそう言ってきた水野。


その様子に俺は異世界のことを思い出してた。

いたなぁ、こういうやつ。


取っ付きずらかったけど、後から心開いてくれたな。

そいつと水野を重ね合わせて俺は椅子をたった。


「探すよ」

「え?あ、ありがとう」


バネはさいわいすぐに見つかり水野はそのまま分解を進めていった。


そうして授業が終わり、昼休みになった。

いつものように屋上に向かおうと思ったら水野が声をかけてきた。


「あ、あのさ、西条」

「なに?」

「私たち似た者同士だと思うんだ。あんたは違うよね。他の奴らと」

「なに?厨二病?」

「あ、いや、そんなんじゃ」


ごにょってる水野に聞いた。


「なにが言いたい?」

「いっしょにご飯食べよ」

「好きにしたら」


そういう訳で今日はクール系の水野と昼食を食べることになった。


ベンチに座ってると水野が聞いてきた。


「私氷の女王とか呼ばれてるけど、西条は私の事どう思ってるの?」


「別になんとも。コミュケーションが苦手なんだろうなぁって思ってるだけ」

「わ、私はコミュ症じゃないっ!」


イメージとは予想外に必死に弁明してくる水野だった。


コミュ症なことをそんなに気にしているらしい。


食事も終えたので背もたれに思いっきり背中を預ける。

どうせ教室に帰っても寝ることしかやることがないし。


そんなことをしていた時だった。


校内放送が鳴った。


『生徒の皆さんは大至急体育館までお越しください』


ため息を吐きながら立ち上がる。


「なんなんだろう。急に呼び出しなんて」

「さぁ、まぁでも行くしかないみたいだ」


俺と水野は体育館に向かうことにした。

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