第11話 ダンジョンへ

ダンジョン内部に到着した。


外は野次馬とかでいっぱいだったけど、なんとか潜り抜けて中に入った。


そしてそのままダンジョンを進んでいくと途中で桐崎に出会った。

桐崎は怪我をしていたようで横穴に隠れていた。


俺を見るなり笑っていた。


「来てくれたんですね強キャラさん、さすがですよ」

「事情が変わった」


椎奈が学校に行きたいというので仕方なく、だ。


で、それから質問。


「こんなところで何してる?」

「ボスモンスターが強くてですね。それで」


そのとき、桐崎が持ってたスマホから声が聞こえた。

機械音声だった。


『きりちゃん。何この人初めて見た』

『今厳重にダンジョンは警備されてるんじゃなかったっけ?なんで当たり前のように入ってきてるのこの人』


桐崎が答えた。


「この人はね。強キャラさん。たぶんめっちゃ強い人です。私は強キャラさんって呼んでる」

『強キャラさんwww』

『でもたしかに強キャラっぽくはあるよな。厳重な警備を抜けて入ってきてるし「事情が変わった」なんて強キャラしか使わんよねwww』

『強キャラとの共闘とか胸が熱くなるじゃんwww』


そのとき桐崎は聞いてきた。


「あ、配信してて大丈夫ですか?これ一応安全のためにやってるんですけど」

「別に構わない」


理由があるのならそれを止める必要性も感じないし。


それから俺は桐崎の横にいた奴に声をかける。


「そっちは?」

「あ、私はサポーターです。一応。桐崎さんがボスバトルする時とかスマホ持つ役です」


その手には銃が握られているように見えた。


「懐かしいなそれ」


銃を見ると思い出す。


「俺の相棒も銃使いだった」

「だった?強キャラさんにも悲しい過去があるんですか?」


そう聞いてくる桐崎。


「別に死んではいないが、もう会うことは無い奴だ」


そう言うと俺はサポーター女に聞いた。


「貸してくれないか?」

「あ、でも壊れてますよ」


俺は銃を受け取ると軽く全身を見た。


「あー【コア】が破損してるな」


桐崎は聞いてきた。


「コアなんて壊れるんですか?知らなかったぁ」

「常識だよ」


異世界からそうだが、このコアというものは道具や武器に使用される素材の中で一番大事なもの。


命とすら呼ばれるものであり、これが壊れたら動かなくなるのはとうぜんの話。


テキパキと分解して新しいコアを中に詰め込む。


「よし」


ボケーッと俺を見てくる桐崎とサポーター女。


「なに?」

「え、いや。めちゃくちゃ慣れてますねぇって」

「まさか。常識の速度だよこんなもの」


機械音声が聞こえてくる。


『強キャラが過ぎるwww』

『この人慣れすぎだろwww』


俺はサポーター女を見た。


「これは使ってもいいか?整備してるとあの時のことを思い出してしまってな」

「いいですけど」


それから俺は桐崎に言った。


「先に進むぞ」

「も、もう行くんですか?作戦とかって」

「実戦においてレベル差があると作戦通り物事が進むことなんてない」


ゴクリ。

生唾を飲み込む桐崎。


「すごい説得力ありますね」

「実体験だ」


魔王を討伐するのに俺たちは一年かけて作戦を練った。


しかし、結果は惨敗。作戦なんて意味もなかった。

どうやったら勝てるんだってレベルにボコボコにされて終わった。


そして俺の心は折れた。


「虫けらを踏み潰すのに一々作戦を立てないだろ?やばそうなら撤退。作戦なんてそれだけでいいんだよ」


そう言うと俺は歩き出した。

急いでついてくる桐崎。


「さすが強キャラさん。ボスモンスターすら虫けら扱いするなんて」

「ところでボスモンスターはなに?」

「レッドオーガです」

「オーガか。まためんどくさいのがきたな」


そう言って歩いた。

ボス部屋にたどり着いた。


その前に俺はサポーター女からスマホを預かった。


「配信は俺がやってやる」

「どうしてですか?」

「俺が強キャラであれば主人公は桐崎だから。主人公の活躍の場を用意するのも強キャラの役目だろ?」


目を輝かせる桐崎。


「主人公に配慮もできるなんて、さすが強キャラさんですね」


俺は扉を開けた。


中には赤い鬼がいた。


「グォォォォォオォォォォォ!!!!!」

「桐崎。前に出ろサポートしてやる」

「はいっ!」


ダッ!

走っていく桐崎。


俺はその瞬間するために射撃を開始した。


パーン!


援護目的の銃弾が当たった瞬間オーガの全身は破裂した。


「えっ?」


走ってた桐崎の速度がだんだん下がる。


それはまるでシャトルランで限界まで走った時の最後みたいだった。


ポカーンと口を開けて戻ってくる桐崎。


あまりにも呆気なかったな。


(異世界のレッドオーガはもっと強かったはずなんだが)


そう思いながら聞いた。


「弱かったけど今のはボスではないのか?」

「え?今のがボスですよ」

「そうか」


俺はそう呟いてスマホを桐崎に、銃をサポーター女に返した。


グラグラグラグラグラグラグラ。


ダンジョンが崩壊する前の予兆が出始めていた。2人ともボケーッとしてた。


俺はその瞬間、ボス部屋にあった最後の扉に向かう。


で、背後から声が聞こえた。


「強キャラさんすごい!これだけと言わず、これからも私と冒険してください!」


そんな叫び声が聞こえたが、そこにもう俺はいない。

俺が最終エリアに入った時に聞こえてきた。


パタン。

扉を閉めると最終エリアにあったワープゾーンに乗った。


これでこのダンジョンは崩壊して、明日からまた学校に行けるようになると思う。


ダンジョンが崩壊し切るのを一応少し離れた場所から見ていた。


野次馬が集まってくる。


ダンジョンの崩壊を見に来たのだろう。


「あの強キャラさんとかいうやつ強すぎだろ?!今夜中に攻略するとは思わなかったわ」

「ガチで強キャラで草。想像の100億倍強キャラだったわ」

「最後きりちゃんの言葉最後まで聞いてないのも強キャラポイント高いよなぁ」


そんな会話が聞こえてきた。


ガヤガヤガヤガヤ。

人が人を呼ぶような感じ。


俺はダンジョンの崩壊を見届けてから家に帰ることにした。

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