第10話 対談

桐崎に誘われて俺はファミレスに来ていた。


適当に注文して食事をする。


食べ終わった頃になって俺は桐崎に話しかけた。


「で、なんの話?」


本題を切り出すと桐崎はすぐに口を開いた。


ごにょごにょと俺にだけ聞こえるような感じで話す。


「あのさ、西条くんって、ただ者じゃないよね?」

「本人の前で言いますか?それ」

「あっ、たしかに」


ふふふ、って笑ってる桐崎。


それから俺の顔を見てこう言った。


「私君たちの学校のダンジョン消滅を依頼されてるんだけどさ。一緒にきてくれませんか?」

「断ります」


そう言って俺は椎奈に目をやった。


「帰るぞ」

「お、お兄ちゃん?」


驚いてるような顔をする椎奈。


「え?普通もう帰る?」

「帰りますよ」


財布から金を抜いて机の上に置いた。


「もう、面倒事に巻き込まれるのは嫌なんでね」

「もう?」


俺の言葉を拾う桐崎。


ニヤニヤしてる。


「へぇ、もう?」

「も〜っていう不満を表す方ですよ」

「絶対違うでしょ。キャラ的に」


桐崎はそう言うと机の上にスマホを置いて俺の方にスライドさせた。


表示されてたのはメッセージアプリのQRコード。


「交換しましょうよ。連絡先」


桐崎はそう言うと椎奈に目をやる。


「妹さんからも言ってあげてください」

「お兄ちゃん、交換してあげないの?」


椎奈にそう言われてはこう言うしかない。


「仕方ないにゃ〜」

「うぷっ。ぶふっ!」


桐崎が笑いを堪えているようだった。


俺はスマホを起動してとりあえず連絡先登録しておいた。


それで帰ろうとすると桐崎はこう言ってきた。


「安心してくださいよ。あなたのこと言いふらすつもりありませんから。そこは信頼してください。何があったのか知りませんけど」

「何も無いよ」


シラを切りながら俺はファミレスを後にすることにした。


ファミレスを出て近くのコンビニ前を通った時に椎奈が口を開く。


「サンドイッチ買ってきていい?」

「何に使うんだ?」

「おっぱいさんど」

「はしたないけど、いいよ」

「わーい」


椎奈が走っていった。

まぁ、冗談だろう。


実の兄にそんなおっぱいさんどなんてするわけない。



家に帰ると椎奈が部屋の中まで入ってきた。


「最近はよく遊びに来るな」

「スラちゃんいるしー」


俺のスライムをムニムニしている。


このスライムも慣れたもので俺や椎奈の前だとべっとりとくつろいでる。


「お兄ちゃんこの子名前なに?」

「スライム」

「え?それ名前だったの?!」


そんな会話をしていた時だった。

俺のスマホのロック画面が見えた。


通知が来ていたようで見てみると



桐崎:学校のダンジョンに来ました



そんな表示が出てる。


適当に返事を返すと、すぐに返事がくる。



桐崎:西条くんは報告しても来てくれないんですね(;-;)



(行くわけないだろ。魔王退治だろうとダンジョン攻略だろうと勝手にやっててくれ。俺はもう知らん)


そう思いながら返信することにした。


そうしてると椎奈が声をかけてきた。


「そういえばさっき食事したの桐崎さんだよね?今ネットで有名な人!」

「そうなのか?」

「知らないの?めっちゃ有名な人だよ」

「あいにく最近はネットも見てなくてな」

「クラスの人と会話出来てるの?」

「そもそもしてない」


そう返すと目をキラキラさせる椎奈。


「お兄ちゃんさ。なんか強キャラっぽくなったよね」

「強キャラ?」


最近よく言われるけど、そんなに強キャラっぽいんだろうか、俺は


「なんか、漫画とかアニメに出てくる強キャラっぽいっ!陰から現れてすっと実力見せていく謎の強キャラっぽい」


椎奈から見た俺はそんな感じの人間らしい。


俺はそうは思えないけど。


「桐崎さんと接点があるのに、俺はなにも知らねぇ、興味ねぇ、みたいな態度とか強キャラだよ」


そう言ってから椎奈は俺に聞いてきた。


「もしかしてさ。数日前のやつ事故じゃなかったりする?不自然だよね、目撃情報なにもないの」


俺は椎奈に目を向けて言った。


「椎奈、そんなこと聞いてどうなる?俺が例えば精神世界で修行したとか言っても信じないだろ?」


そう言うと椎奈は目を輝かせてこう言った。


「やっぱり事故じゃないんだ。強キャラだっ!絶対強いやつ!」


そのときだった。


「ぎゅぴー」


いつも大人しいスライムが椎奈の腕から出てきた。


それでズルズル動いて窓の方へ。


「ぴー、ぴー」


スライムが窓の外を見てる。


視線の先にあるのは学校だ。


学校のダンジョンが少し光っていた。


「あれは……」


俺はあの光を見た事がある。

異世界で。


ダンジョンが光る時というのは新たに強いモンスターが出てきたときだ。


椎奈が横によってきて聞いてくる。


「知ってるの?あれのこと」

「さぁな」


そう答えると椎奈は言った。


「私は強キャラの頼れる妹やるから話してくれていいよ」


ふんって自信満々に言ってくる。


そのとき椎奈はスマホを触った。

音声が流れてくる。


『なんだ、あのモンスターは』


桐崎の声だった。


「あの人配信してるんだよダンジョン攻略を。ダンジョンでも回線繋がるらしくてさ、安全確保のために配信してるの。やばいみたいだよ」


俺が椎奈の顔を見てると椎奈は言った。


「強キャラムーブしに行こうよ。たいへんみたいだよ桐崎さん」

「しょうじきアイツがどうなろうと知ったことじゃない」


俺はそう言いながらも考える。


(この世界のダンジョンはモンスターを生み出す場所だ。あのダンジョンからはモンスターが出てくる)


そして光ったということはかなり強いモンスターがあのダンジョンにはいることになる。


今の日本人のレベルで勝てるかどうかは定かでは無い。

俺も異世界で強いモンスターとは戦ったが仲間を連れていってやっとギリギリだった。


それを考えたら無理かもな。


俺はネックウォーマーを取って、それからフード付きの服を取った。


「お、おぉっ?!」


椎奈が興奮した顔で俺を見る。


「コンビニに行くだけだ。何か必要?」

「ジュース買い忘れたからジュース欲しい」

「はいよ」


俺はそう言って部屋を出ていくことにした。

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