第6話 強キャラ感【担任視点】

職員室に帰った私は他の職員に愚痴ってた。


「はぁ、それにしてもいきなりダンジョンとかだるいんですけど〜」

「まぁまぁ、それは言わない約束でしょう。小西先生」

「でもですねぇ。これが言わないとやってられないですよー」


それから私はふと思い出したように話し相手の佐藤先生に話す。


「あー、そうそう。サンプルのコアなんですけど、すっごい綺麗な色ですねーあれ。宝石みたい」

「サンプル?」


首を傾げる佐藤先生。


あーっ、そっか。


もう2日くらい前の話だしサンプルのことも忘れているのかもしれない。


「覚えてませんか?新規のカリキュラムが導入されてから道具作成をやったじゃないですか?その時のサンプルのコアですよ」


そう言ってみたら佐藤先生は思い出したような顔をしていた。


それから顔を青ざめさせた。


「サンプルあったんですか?」

「え?どういう意味ですか?」


佐藤先生は近くの先生に話しかけていた。


その会話内容はこうだった。


「授業用のコアのサンプルなんてありましたっけ?」

「え?ないよ。まだまだ希少なものだからひとつの教育機関に1つしか用意されてないって話を聞いたけど」


(え?えぇ?!!!!)


私の近くに戻ってきた佐藤先生。


「サンプルは私たちには用意されていませんよ。見間違いでは?」

「い、いえ、たしかにサンプルはありました!」


そう言って私は自分の引き出しの中にあった教科書と【サンプル】を取りだした。


そこにはちゃんとあった。


7色に光り輝くコアが。


「これですよこれ」

「見たこともないですね、こんなもの」


そのとき後ろから新たな足音が聞こえてきた。

それと同時に声も。


「どうしましたかな、2人とも」


振り返るとそこにいたのは校長だった。


私は校長に事の顛末を話した。


「え?サンプル?渡していませんよそんなもの」

「で、でもたしかにここにサンプルがあるんです」

「いえ、でも確かに渡していません。こんなものあるわけが無いですよ」


職員室が騒がしくなり始めた。


「え?サンプルがあった?」

「そんなものないって話だったけど」

「なんであの人だけが持ってるんだ?」


校長は周囲を見てから私に言った。


「それは宝石ではなく本物ですか?」

「宝石なんて持ってきていませんよ。サンプルとしてあったんですよ」

「ふむ……」


その時だった。


ガラッ。


職員室の扉が開いて1人の女性が現れた。


「こんばんはーせんせー。遊びに来たよー」


そこに立っていたのは桐崎という学校の卒業生だった。


卒業後もこうしてたまに会いに来てくれる子だった。


その子はこの状況に物怖じせず、私の机まで歩いてきた。


私は桐崎に聞くことにした。


「桐崎さん?探索者になったんだよね?」

「え?はい。なんか強いスキル貰えちゃったみたいでぇ、仕事やめてなっちゃいましたぁ」


私と校長先生は顔を合わせた。

それから私は聞いた。


「これってコアだよね?」


そう聞くと桐崎さんは目を細めた。


「そうですけど。見たことがないコアですね。それ。お借りしても?」


頷いて渡す。


「ていうか、あげるよそれ。私たちのものじゃないみたいだし。なにかの役に立ててよ」


桐崎は言った。


「見たことないなー。やっぱり。これ新種のコアですよ」


桐崎が言った瞬間教室は騒がしくなった。


「「「「ししししし、新種だってぇぇぇぇ?!!!」」」」


それから桐崎は言った。


「どうしたんですか?これ」


私は事の経緯を説明した。


すると桐崎さんはにんまり笑って言った。


「へぇ、教室に落ちてたんですねぇ?それで教え子が落ちていることを教えてくれたと」


ペロリ。

軽く舌を出して唇を舐めてた。


それから桐崎は言った。


「それより先生。今の1年生の名簿って見せてもらえたりしますか?知り合いが入学したみたいで、制服姿が見たいなーなんて思いまして」


個人情報だから普段は見せることは無いんだけど、校長先生は言った。


「ここで見た事は決して口外しないようにしてくださいね」


その条件付きで名簿を見せてもらっていた桐崎。


一年生の顔写真を見てから桐崎はこう言った。


「ありがとうございました。知り合いのかっこい〜姿を見ることができてハッピーです」


私は聞くことにした。


「知り合いって誰?」

「教えたら贔屓しそうだしやめときますねー。んー、でも」


そう言ってから彼女はこう言った。


「ヒントを出すと強キャラ感が滲み出てますよ」

「強キャラ感?」

「はい。私からはこれだけです。一応個人情報?ですしねー」


それから桐崎はとあるものを渡してくる。


「授業で使う分のアイテムの納品でーす」


そう言って納品書を渡してくる。


実はと言うとこの学校が授業で使う道具に困らないのは桐崎さんが1枚噛んでくれていたおかげなのだ。


「では、私はこれで。恩師の顔を見れて嬉しかったですよー」


そう言って帰ろうとする桐崎さん。

それが合図になったように校長先生も離れていったしみんな業務に戻ろうとしていた。


私は机に向かって頭を抱えていた。


(強キャラ感、ねぇ)


そう言われて1人の男子生徒の顔を思い浮かべていた。


筋肉モリモリの腕ムキムキの男子生徒。


柔道部所属の【金肉カネニクくん】のことを。


でも、桐崎さんにあんなマッチョマンの知り合いがいるとも思えなかったけど。


人というのは見かけによらないかもしれない。

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