よーいドン

楽しかったなと冷えた体を摩りながら電車を待っていた。「あのこれ落としましたよ」と彼女が財布を渡してくれた。電車が通り、風と騒音が体に当たる。「ありがとうございます」大声で言ったつもりだが聞こえなかったらしくニコッと笑ってあざとく首をかしげる。風になびく髪はとても美しかった。


彼女は僕と同じ駅で降りるらしい。話をするうちに連絡先を交換するほど仲良くなった。「じゃあ僕こっちなんで」と白い息を吐くと「またお話ししましょうね」と手を振ってくれた。


久しぶりの感覚を思い出し嬉しくなった。


家に着くと寒さなのかわからないがぽっぺが赤くなっていた。胸を抑えながらガッツポーズをした。


「ジリリリリ」という音で目が覚めた。青空を見上げ白い息を吐いた。あれは夢だったのだろうか。そう思いスマホを見る。4件の着信が入っていた。「今日は楽しかったです!!」「今度オススメの映画があるんですけど一緒に見ませんか?」「お返事待ってまーす!」「おやすみなさい」読んでいると向かいにいたおじさんが冷たい視線で僕を見ていた。やばいニヤニヤしていたのかそう思いながら返信する。


「返信が遅れてすいません。全然いいですよー何ていう映画ですか」これでいいだろうか。そう考えていると「ヴッ」バイブが鳴った。「ハリボテの絆っていう映画なんですけど、ドラマでやってたのが映画になったんですよ!」


ドラマは見たことがあった。詐欺師が国に雇われて闇のお金を悪い詐欺師たちから取るという物語だ。大どんでん返しが人気を得ている。楽しさは詐欺を本物にするというキャッチコピーは刺さるものがある。


「僕も好きなんすよー見に行きましょー」そう返信するとまた、「やっぱ僕さんとは気が合いますね笑」僕も笑と送信して電車を降りた。


講義を受けている僕の横でガタンと物音を立てた。「スイセン」寝不足らしい彼は昨日イルミネーションを見た奴だ。僕と別れたあとバス停で待っていたという彼は高校生四人組が話す心理学とオカルトに加わり、少し話をしていたらしい。「お前よりも心理学に詳しいやつが一人いてさめっちゃ面白かったわ」なんて自慢する彼に何時まで高校生を付き合せたんだよと怒った。


講義が終わり食堂でカレーうどんを啜るルイに良い人見つけたと打ち明けた。「お前らしいわ4日楽しんで来いよ」そう口を拭く。こいつと友達でよかったなんて思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る