説明

 まさかアニスに執務室まで拉致られるとは思わなかった…


「逃げようとされても困るので」

「信用ないなぁ…」

「ご自身の行動を省みてください」

「うぐっ」

「全く…これが仕事ですよ……

「……ふぇ?」


 ドンッ! と机の上に書類の山が積まれる。

 え、いやこれ午前の仕事……?


「昨日の分が残っていますので」

「…………」


 そう言えばマリ関連のことしてて、本来の仕事途中でやめたわ。まじかぁ……はぁ。マリもちゃんと仕事してるし、やりますか。


◆◆◆


「言い忘れとったな。ワシがここ騎獣舎の責任者のボッジじゃ」


 おじいさん…ボッジさんは、そう言ってニッコリと微笑んだ。責任者と聞いたけれど、堅いような厳しいヒトじゃないみたいで、ほっとした。


「ワシらの仕事は、この魔王城で働く者たちの騎獣の世話をすることじゃ。基本襲うことなどはないが、舐めてかかると怪我するぞい」

「は、はい」


 ボッジさんがそう言いながら騎獣舎の扉を開ける。中央に通路があり、両側に鉄格子が並んでいて、その中に騎獣がいた。それぞれ個室のようになっている。


「そうさな。まずは大人しいやつから世話してみるか」

「はい…あの、ユーリ様の騎獣っているんですか?」

「ユーリ様の騎獣か? もちろんおるぞ。だがな、お前さんにはちと早い」

「早い、とは…?」

「どう言うべきか……獣は本能に従う生き物じゃ。他者への配慮は基本考えない」


 それは分かるので、素直に頷いて返す。


「だから、オーラ…まぁ、威圧のようなものを抑えることもせん」

「オーラ…」

「そう。そしてユーリ様の騎獣はここで最も強い。そんな存在のオーラに生半可な者が当たれば、良くて気絶。悪くて…命を落とす」

「………」


 そこにただ居るだけで命を落とすような存在。それが、ユーリ様の騎獣…。


「じゃから、お前さんにはちと早いのじゃ。まぁ、ここで働けば段々と他の騎獣のオーラに慣れるじゃろうから、いつかは世話が出来るやもしれんの」

「なるほど…」


 ユーリ様の騎獣……とっても気になる。だってあんな小さな……うん、これ以上言わないでおこう。怖いもん。

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