癒しだわぁ…

 独り言が聞こえたから、こっそりと魔法で部屋に忍び込んだんだけど……


「いつまでいられるのか、ねぇ…」


 確かにそう思っても無理は無い。誰だっていきなりこんな所に連れてこられたら夢だって思うし、それが現実だと認めても、いつ終わるのか不安になる。


 ……正直、わたしが魔王としてここにいるまで、この子はここにずっといていいと思っている。でもそれを伝えても信じることは難しいだろうしなぁ…。


「はぁ…」


 ため息をつきつつ、ベットで眠る獣人の女の子の頭を撫でる。さっき慌てていて話が出来そうになかったので、眠らせたんだよね。


「どうしたもんかなぁ…」

「…では、を与えてみては?」


 わたしの後ろにいつの間にかいたアニスが、わたしの呟きにそう助言してきた。


「理由?」

「はい。こういうタイプのヒトは、いる理由が分からない。見つからないから、不安になるのです」

「……なるほど。だから、ここにいる理由か」


 理由を作るとすると、城で働くのが1番手っ取り早いけど…獣人の女の子で出来そうで、かつ今働いているヒトから嫌な目で見られない仕事って……


「そう多くないですね…」

「だよねぇ…」


 2人してため息をつくと、女の子が身動みじろぎした。そしてその閉じられた瞳が開き……


「……ふぇ?」


 フリーズした。


「起きた?」

「あ、は、はい! ま、魔王様…」

「魔王様って呼ばれるのは好きじゃないんだ。出来れば、ユーリって呼んでくれないかな?」


 望んで魔王になった訳じゃないし、それはわたしの名前では無いから公務の時を除いて魔王と呼ばれたくは無い。


「え、でも…」

「大丈夫。コレも名前で呼んでるから」

「…コレという言い方はどうかと思いますが…ユーリ様が魔王様と呼ばれることを嫌っているのは本当です。なので、そう呼んで差し上げてください」

「え、ええっと…ユーリ、様?」


 小首を傾げながらそう言う。

 ……やばい。可愛いわぁ…ここ癒し少ないんだもん。体格良いデッカイのばっかでさ。それが理由には「なりません」……だよね。はぁ…。









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