心配
次の日。ちょっとやりたいこと出来た。
「……なんでしょう。物凄く嫌な予感しかしません」
「失敬な。ちゃんとしたことだよ」
「……なにをなさるおつもりで?」
「わたしってさ、城のヒト達あんまり知らないじゃない?」
「……そこまで聞いたらもう分かりますが、どうぞ」
「つまり!」
お忍びで城を回ってみよう!
「……絶対後で面倒なことになるので止めてください」
「なんでよ?」
「……ご自身の御姿をよく、よーく見てください」
「…………」
……子供だね。うん。アニスの言いたいことが理解できた。
お忍びする→誰かが見つけて迷子だと思う→騎士を呼ぶ→騎士がわたしの正体に気付く→カオス!
……本当にカオスになるだろう。
この城には居住区画もあって、城で働くヒトの家族が住んでいる。だから、そこからの迷子だと思われる可能性は高いんだよね。
「なので諦めて下さい」
「うぅ……あ、そう言えばあの子は?」
色々あって今の今まで忘れていた、助け出した子の事を思い出す。
「あの子…あぁ、ユーリ様が誘拐した」
「言い方!?」
「冗談です。色々と混乱しているようで、一人で部屋にいますよ」
「……ちょっと様子見てくる」
「ちょっとですよ?」
「分かってるよ」
同意があったとはいえ、こんな城にいて精神が参ってないといいんだけど……
◆◆◆
わたしは家族に売られた。でもそれが生きるため。だから文句はない。わたしが売られて、家族が生きれるのなら、それで。
売られた後の生活は、あまり思い出したくはない。本当に辛かった。いっそのこと…と思ったことは何度もある。でも、やろうとすれば直ぐに気付かれてきつい罰を与えられる。だから出来なかった。
そんな生きる意味すら失いかけていた時、光がわたしのいる場所を照らした。光の玉で、その下にはわたしと同じくらいの女の子がいた。
「助けに来たよ」
笑顔でそう言って、その言葉通りに助けてくれた。でも助けられてもわたしには行くところがない…。
そう言ったら、「うちに来る?」と言われた。わたしは直ぐに頷いた。これ以上、その場にいたくなかったから。
「でも…早まったかも」
今まで感じたことがないほどフカフカで気持ちいいベットの上に転がる。まさかあの子…いや、あの方が魔王様だったなんて知らなかった。
お風呂で綺麗にしてもらって、綺麗な服を着せられ、美味しい食事を食べた。
まるで夢のようで…何度も頬をつねったけど、これは現実だった。
………でも今度は別の不安が襲ってきた。
「いつまで…いられるのかなぁ」
この施しが気まぐれなら……わたしはいつ放り出されてもおかしくない。それが、怖い。
「ふふっ。まぁ、そう思うのも無理は無いのかなぁ」
「っ!?」
突然部屋に可愛らしい声が聞こえた。この声は…
「あ、驚かせちゃった? ごめんね」
「あ、えっと…」
その姿を視界に収めて、口をパクパクするけれど言葉が出ない。言葉にしようとするほどぐちゃぐちゃになって……。
「大丈夫だよ」
目の前の方が微笑んだ瞬間、わたしの意識はプツンと途切れた。
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