魔力測定具

 あんだけあった書類の山だったけど、案外資料仕事は早く終わった。大体2時間くらいかな?


「本来そんな早く終わる仕事量じゃねぇんだけどなぁ……」

「え、そうなの? わたし毎日これくらいやってるんだけど……」

「「はぁ!?」」


 わぁ息ぴったりじゃないか。流石親子。


「何かおかしい?」


 小首を傾げながら聞く。魔王って大体こんなくらい仕事しないの……?

 そう思って尋ねた相手のディルヴァーは、何故か顔を赤らめてポカンとした表情をしていた。どしたの?


「…一瞬お前の年齢を忘れそうになったわ」

「ん?」

「何でもねぇよ。つーかお前、ほんとに毎日こんな量してんのか?」

「してるよ? 多分」

「……ちなみに聞くが、宰相とかいねぇの? 他に手伝うやつとか」

「うーん……」


 問い掛けられて、少し考える。アニスは……手伝うことしないもんな。基本身の回りの世話だけ。書類を運ぶのはやってもらったりするけど。

 そういえば改めて考えると、宰相っていたかなぁ? と疑問に思う。


「…その様子だと居ねぇな」

「多分…? 見たことないし」


 常に一緒にいるのはアニスだけだからなぁ…そういえばそんなに城の働いてるヒト分からん。名前は一応全部確認はしてるけど。顔写真付きで。


「…お前、過労死しないか?」

「大丈夫。サボるから」

「それは大丈夫とは言わねぇよ……まぁ、何はともあれ、ありがとな。助かったぜ」

「いいよこれくらい。…帰ったらわたしも仕事あるけど」

「じゃあもう帰るか?」

「うーん……あ、そうだ。ここに魔力測定具ある?」

「あるにはあるが……まさか測るのか?」

「なにか問題ある?」

「……壊しそうで怖いんだが」


 確かに魔力測定具はその測れる上限より魔力が多ければ壊れるけど…そうそう壊れるものじゃなくない?


「…まぁ、いいか。じゃあ城の地下の魔力測定具使うか」

「あぁ。魔力が少ないヒトが測ったら危険なやつ?」

「そうだ。もう何年か前に発掘したやつだな」


 魔力測定具は、昔に作られた物の方が性能がいい。なぜなら、今では採れない材料を使っていたりするから。

 そして、たまにそんな材料で作られた魔力測定具が発掘されるんだよね。それがディルヴァーの言っている物。

 ただ、それらの中には逆に性能が良すぎる物もあってね……魔力が低いヒトが測れば、身体中の魔力を吸われちゃうんだ。

 魔力は命そのもの。無くなれば死ぬ。だから危険な物として、ディルヴァーが管理している。


「んじゃ行くか。ウィルはどうすんだ?」

「……見ても大丈夫?」

「問題ねぇ。そんな秘密にするようなもんじゃねえからな」

「じゃあ行く」

「よし。あそこは転移できない場所だからな。歩いていくぞ」


 へー、転移妨害か。なかなか厳重だね。

 わたしは部屋を出て、ディルヴァーの後をついていった。




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