ヤバいらしい

 部屋を出てディルヴァーの後を大人しくついていくと、重そうな扉の前で立ち止まった。

 その扉にディルヴァーが手を当ててしばらくすると、ひとりでに扉が開いた。これは──


「魔力登録?」

「ああ。間違って中に入っちまわねぇようにな」


 盗まれる心配よりも安全の心配なんだろうなぁ…まぁ、盗むほどの価値があるものでもないんだけど。いくら発掘された物だとしても、ありふれた物だし。


 扉の先には地下へと続く石段があった。

 ディルヴァーが足を踏み入れると、壁に設置された証明に光が灯る。自動か。

 

「いくぞ」

「うん」


 踏み外したらとんでもなく恥ずかしいので、踏み外さないように慎重に降りる。

 ……うん。前に魔王城で思いっ切り階段で転げ落ちたことあってね。恥ずかしかったよ、あれは……。あの時身体をくの字に曲げる程大笑いしたアニスを、わたしは未だに許してない。


 しばらく石段をディルヴァーの後ろについて降りていくと、広いわけではないけど、狭いわけでもない空間に出た。


「あれだな」

「どれどれ?」


 ディルヴァーの体が邪魔なので、横にずれて確認する。

 部屋の真ん中あたりに台座があり、その上に石版のようなものがのっていた。見た目は魔導石版タブレットみたい。


「とりあえずついでだから、やり方の説明も兼ねて測ってみるか」

「おー。ディルの魔力知りたい」


 ディルヴァーが石版の下の方に手を触れる。すると石版に刻まれた文字が輝き始めた。

 緑色に輝いた文字は光となり、空中に浮かび上がる。そしてそれぞれが形を変え、数字が浮かび上がった。


 数値:3584690


「前より増えてるな」

「これが魔力量?」

「そうだ」


 一般的な魔族の成人の魔力量は…種族によって異なるんだけど、ディルヴァーの場合エルフだから、大体50~100万前後。さすが魔王だね。3倍以上だ。


 空中に浮かんだ数字は一定時間経つと、まるで解けるようにして消えていった。


「じゃあわたし測るね」

「おう」


 手を置く……届かない。仕方ない。飛行魔法で体浮かして…届いた。


「くっくっ…」


 ……笑ったディルヴァーはまた蹴っておこう。

 それはさておき、石版に手を触れる。おお…魔力が吸われる感覚がする。

 しばらくすると、また同じように文字が光始めた。

 ………でも、その文字は


…見たことねぇぞ」


 え、マジで?

 止めようにも動き始めた以上止める事は出来なくて、文字が緑ではなく赤く煌めき、空中へと浮かび上がる。そして、数字を形作っていく。


 数値:999999999999………


 ……何これ。


「…カンストかよ」

「こ、壊してないよ!?」

「分かってるわそんなこと。はぁ…ここまで規格外だとは思わなかったぜ」

「え、これどうなの……?」

「……所謂測定不能ってやつだ」

「えっと…それはつまり…?」

「……お前の魔力量は、この測定具では測れんってことだ」


 だよね! まさか測れないとは……100年前は測れたんだけどなぁ。


「…聞くが、どれくらいだったんだ?」

「えっとね……3000万? それくらいだったと思う」

「…昔からやばかったんだな」


 ディルヴァーの頬が引き攣っている。まぁ正真正銘化け物だよね……わたしの種族も関係してるかもだけどね。




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