西の魔王城

 そういえば、西の魔王城をわたしは見たことがない気がする。


「というかお前、他の魔王城見たことねぇだろ」


 ディルヴァーが返してきた言葉に、「確かにそうかも」と頷く。


「……じゃあ見せてよ」

「お前なぁ……まぁ、いいか。今日は仕事終わって帰ってきただけだからな。一応午後から行く予定はあったから、別にいいだろ」

「やった!」


 正直城というものに興味はない。けれど、知らないこと、物を知れるのはやはり楽しいし嬉しい。


「……そういうとこは子供っぽいんだがな」

「なんか言った?」

「んにゃ。何も。じゃあいくか。スマンな」


 あ、そっか。奥さん1人にしちゃう。


「いえ。ユーリ様の頼みですし、構いませんよ。それに何より、私は家にいるほうが気楽ですから」


 そういえば奥さんと一緒に城に住むっていう選択肢もあるんだよね。でも確かに家の方が気楽かもね。


 

 ……ちなみに魔王の子供が、次の魔王になれる訳じゃない。前も言ったように、強い者が魔王になる。だから、子供であっても、親である魔王に勝たないと、魔王にはなれない。

 まぁ、生まれた時から運命が決まってるよりましだよね。魔王になる事が決まっていたなら、戦う力を求める事以外出来なくなるから。


「じゃあいくぞ。ほれ手ぇ握れ」

「はいはい」


 複数の人数を転移させる場合、お互いの体のどこかが触れていたほうがやりやすいし、正確性がある。だから大体は手を繋ぐことが多いんだよね。


 手を繋いだ瞬間、視界がグニャリと曲がる。他人の転移はこの感覚があるから、あまり好きじゃない。




「…着いたぞ」

「お? …おぉ。なんというか……木」


 ディルヴァーがずるっと滑ったような仕草をする。あなたそんなにお茶目だったっけ……?


「……はぁ。まぁ、言い得て妙だとはおもうがな」

「でしょう?」


 正確には城が木なんじゃなくて、木に城が取り込まれてる感じ。なんか神秘的。


「…ところで、なんで外?」

「そりゃ城見るためだろ。どうだ?他に感想は」

「うーん……燃やしたらすぐ陥落しそう」

「物騒なこというな!?」


 いやだって……ねぇ? いくら生きている木といえど火力を上げれば燃やすことはまぁできる訳で…


「…多分それできんのお前だけだぞ」

「え、そう?」

「はぁぁ…普通は生木を完全に燃やすのなんて無理だぞ。あの大きさなら尚更な」


 確かに城ぐらいあるから大きいだろうけど…そこまで難しい話じゃないよ? 精々周りのくらいで。


「…まぁ、念の為対策は考えとくよ。ほら、いくぞ」

「ほーい」





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