未成年だよね?

 とりあえず引っ捕まえて締め上げたので、良しとする。満足満足。


「こ、腰がァ…」


 ドロップキックをかましてやったからな。ははは。

 全く…誰が結婚できないだ! 確かに結婚願望はほぼ無いけど、だからって結婚出来ないとか言われれば流石に怒る。え、理不尽? 知らなーい。

 そんなこんなありつつ、わたしはディルヴァーの家へと足を踏み入れた。そして改めて思うが、やっぱり中は以前とは比べ物にならないほど、広くなっていた。


「ようこそ。俺の家へ」


 一応は家主らしく招き入れるディルヴァー。すると奥の方からパタパタと足音が聞こえてきた。


「おかえりなさい…あら。お久しぶりです」

「久しぶり」


 現れたのは、エルフの女性。ディルヴァーの奥さんだ。このヒトに会うのもざっと80年ぶりくらい。


「ええっと…」

ユーリだよ」

「はい、ユーリ様」


 彼女が名前を呼ぶのを躊躇ったのには理由がある。それは…わたしの名前が変わっているからだ。

 元々わたしの名前は、ユーリじゃない。変えたのは…50年くらい前かな。だから彼女はわたしの今の名前を知らなくてどう呼べばいいか戸惑ってしまった。それでも瞬時に受け入れてくれるあたり、流石ディルヴァーの奥さんだ。


「じゃあ俺もユーリって呼べばいいか?」

「そうだね。説明の時は前の名前使ったんでしょ?」

「ああ。そっちの方が知られてるからな」

「………」


 そう。わたしの前の名前は、寧ろ今の魔王としての名前ユーリより知られている。その理由は……まぁ、色々とね。


「で。仕事のほうはどうだ?お前が魔王になるなんて、世界がひっくり返ってもないと思ってたがな」

「わたしだって思ってなかったよ……なんか気付いたらなってたんだよね」

「気付いたらなれるようなもんじゃねぇんだけどな……」


 そんな呆れた様な声で言われたって仕方ないじゃん。飲みすぎで記憶も曖昧だし。流石に誰かを殺しては無い…はず。


「じゃあアドバイスをやろう」


 そう。実はコイツも魔王の1人だ。西の魔王。それがディルヴァー・リンフォードの肩書き。だからウィルフレッドからリンフォードの家名を聞いた時、やべぇってなったんだよ。魔王の息子を誘拐するとか龍の尻尾を踏んだも同然でしょうに。


「アドバイスぅ?」


 胡乱げに聞き返す。この男の事は昔から知っているが、そんな役に立つ知識を持っているような人物でないことも知っている。


「おう。仕事はな、朝に終わらせるのが1番だぞ! 午後から自由になるからな!」

「……午後に仕事が追加されたら?」

「そんときはそんときだ!」


 ……毎日そんな状況なんだけど。終わったそばから仕事が増えてくんだよ? 一回は真っさらになった机に昼食から帰ってきたら山が復活してるんだよ? そらやる気も無くなる訳で……


「はぁ…」

「まぁ頑張れや。俺は仕事の一部をウィルフレッドに任せてるから、ちょいと楽だがな」

「…ちょっと待って。ウィルフレッド何歳?」

「えっと…」

「今年で60歳ですよ」

「…まだ未成年じゃん」


 エルフとか、まぁ人間以外の種族は長命。だから成長も遅くて……大体100歳前後で成人となる。未成年に仕事任せるってどうなのよ……




「…そういやお前魔王になるまで無職だったな」


 うるさいやい!


 


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