脱出
牢屋を確認していくと、誘拐され、捕まっていた子たちの種族は本当にバラバラだった。
さっきのエルフの少年に、獣人。鳥人。樹族etc……。
ちなみに人間は自分達以外のヒト型全てを魔族と呼んでいる。人間達からすれば、わたし達全員異形の怪物らしい。
……ちょっとヤバいかもとか思ってたけど、それどころじゃなかったわ。それぞれの種族からこの国総攻撃されても文句言えないレベルだぞ、これ。わたしが来なかったらこの国本当に明日にでも終わっていた可能性がある。
「僕たちを、どうするつもり…?」
「いやどうするも何も。助けに来たんだって」
「……ほんと?」
「ホントだよ」
不安そうな表情を浮かべる獣人の女の子を撫でる。おぉ、この耳もふもふだ。
「あ、あんまり触らないで…くすぐったい」
「あ、ごめんねつい」
もうちょっともふもふしたかったけど、嫌がられることはしたくないからね。諦めよう。
「さてと。1番問題なのは…あなただね」
「俺?」
わたしが指を指したのは、エルフの少年。だってねぇ…エルフって、戦争の影響で人間嫌いだから。こんなことされたってなったら、絶対また戦争になる。それは避けないといけない。
「名前、教えてくれる?」
「……ウィルフレッド。ウィルフレッド・リンフォード」
「そっかぁ……って、えぇ!? まじで!? リンフォード!?」
「お、おう」
はぁぁぁ……ほんとこの国終わるぞ。
「……ちょっと連絡するから待ってて」
「…え? あ、あぁ」
子供たちから離れて
『…なんだ。悪いが今は時間ないんだ』
少しして何とか繋がったけれど、不機嫌を隠そうともしない声が聞こえる。うわぁ…やっぱりだぁ…。
「それって子供探すため?」
『…なんで…いや、お前なら有り得るか』
その評価どっからくるんだろうか……まぁいいか。とりあえず確認しよう。
「ウィルフレッドって名前?」
『ああ』
ビンゴ。
「その子を探してるんだよね」
『そうだ。だから今は…』
「見つけたよ」
『…は?』
「いやね。ちょっとした用事こなしてたらさ。見つけた」
『…そのちょっとした用事が気になるんだが』
「こまけぇこたぁいいんだよ」
『お、おう』
反応そっくり。
「……じゃあそっちはどこにいるの?」
『今は里だ。今から捜索に向かうところだった。ジジィ共を説得すんのに時間かかってな…』
確かに年寄りのエルフは郷から出るのは否定的だからねぇ。
「じゃあ直接送るよ」
『ああ、頼む。後でどう説明しようか…』
「……説明が面倒なら、わたしの名前、出してもいいよ」
『……いいのか?あれだけ自分の名前出すの嫌がってたくせに』
「仲間の為だもの」
『……分かった。感謝する』
そこでプツリ通信が切れた。やれやれ……何とか大事にならずに済みそうだと胸を撫で下ろす。
「じゃああなただけ先に送るね。連絡ついたから」
「連絡ついたって…」
「あ、それと、誘拐されたってことは言わないこと」
「は? なんでだ?」
「…下手したら戦争になる」
「…っ!」
この言葉を信じるってことは、かつて何があったを知ってるんだね…。まぁ魔族って基本的長寿だからね。知っててもおかしくは無い。経験は無いだろうけど。
「だからそうだなぁ……遊んでたってことにでもしといて」
「…それ俺思いっきり叱られねぇ?」
「それは…頑張れ。まぁ、あなたの父親が上手くやるさ」
「親父と知り合い…?」
「まぁ、後で聞くといいさ。じゃあね」
「あ、おい!」
少年の……ウィルフレッドの姿が掻き消える。これでやっと1人か……頑張ろ。
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