助けに来たよ!

 地面に倒れる男たちを跨いで、いかにも怪しい奥の扉へと向かう。

 鍵がかかっていたけれど、扉ごと壊せば無問題。弁償は勿論しない。


「…酷いもんだね」


 空からけど、環境までは分からなかったからなぁ……

 扉の向こうは地下へと続く階段になっていて、降りるとほとんど光がなく、排泄物の臭いがこもっていた。本当に有り得ない。でもここでわたしが怒りに任せても、何も解決しない。というか動いてるんだしね。

 魔法で風を起こして中の空気を入れ替えつつ、光の玉を創り出して奥へと進む。

 すると暫くして、目の前に鉄格子が並んだ場所が現れる。その格子の向こうには、足首を鎖で繋がれた子供たちがいた。首にはわたしに付けられた物と同じ、魔封じの首輪がある。


「大丈夫?」


 優しく話し掛けるけれど、明らかに警戒されている。幸い大きな怪我をしている子は見受けられないけど、ここまで警戒されてると迂闊に近付けない。困ったなぁ……


「…あんた、誰だ」


 そんな中、年長と思しき男の子が話し掛けてきてくれた。見ると耳が少し長い。おそらくエルフだろう。

 ……エルフを誘拐するとか。ほんと馬鹿なんじゃないか。


「おい」

「ああ、ごめんね。わたしはユ…ナ」

「ユナ?」

「そうそう」


 魔王としてのユーリって名前は結構知られてるからね……思わず偽名を言ってしまったけど、疑われてないみたいだから良かった。


「名前は分かった。だがなんでお前みたいな小さいのがここにいる?」


 ……怒らないよ。流石に。子供の言葉なんだから。


「あなた達を助けにきたの」

「助けに…? バカを言うな。お前みたいなのになにができる」


 むぅ。せっかく名前偽名教えたのに言ってくれない。まぁいいけど。


「意外と強いよ?わたし」


 ニッコリと笑って魔力を空気中に流す。するとあからさまに男の子の顔が引き攣った。


「わ、分かった。分かったからやめてくれ!」

「はいはい」


 魔力を霧散させる。ちょっと子供たちには強すぎたか……感覚を城で働いてるのに合わせたのが不味かった。

 魔族が強さを他者に示す方法として一番手っ取り早いのが魔力を解放する事だ。でもこれは一種の威圧でもある。場合によってはこれだけで相手を殺す事も出来てしまうからね。相手は子供なのだし、扱いは慎重にしないと。


「とにかく、開けるね」


 鉄格子に付いている鍵を破壊し、扉を開ける。だって鍵探すの面倒だったもの。

 そして中へと入り、子供たちの足首に付いていた鎖を破壊した。これも魔封じの道具だ。外部から壊すのは容易い。


「…いとも簡単に」


最初に話し掛けてくれたエルフの男の子が、後ろでドン引きしているのがよく分かる。


「まぁ、魔力だけはあるから」


 ちなみに魔力の量は感覚で大体分かるけど、詳しく調べるなら器具が必要。

 そう言えば最後に測ったのいつだっけ。確か……百年くらい前だったっけかな。

 ……帰ったら測ってみようかな。いやそもそも測れる道具あるかな……。




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