救出

 しばらく待っていると、外から騒ぎ声が聞こえ始めた。


「大変です!兵士がこっちに!」

「なに!?バレたのか!?」

「そんなことどうでもいい!もってずらかるぞ!」


 扉の向こうから聞こえる複数の声。その内容に思わず顔を顰める。

 商品、ねぇ……ほんと嫌な気分になるなぁ。


「くそっ! 開かねぇ!?」

「何やってんだ!」


 ガチャガチャとドアノブが動かされるが、ドアが開く気配はない。わたしの結界を舐めないでほしい。ウチの戦力全動員して罅一つ付かなった代物なんだから。

 しかし、子供たちにとってこの荒々しい男たちの声とノブの音は十分恐怖心を煽るものだったらしく、全員涙目になってしまっていた。


「あらら。流石にそうか」


 これ以上は可哀想なので、魔法で眠らせておく。他の部屋も同様に。同じ様に誘拐犯達も眠らせればいいと言われるかもだけれど、現在興奮状態にあるから睡眠魔法が効きずらい。ゴリ押しもできるけどねぇ…ミスると永遠に起きなくなったりするからなぁ。流石にそこまでやっちゃうと後が…ね。

 ……仕方ない。


「そんなにわたしたちが大事?」


 男たちの後ろから声をかける。すると振り向いた男たちは、ぎょっとした表情を浮かべた。


「な、なんでそこに!?」

「てか首輪がねぇ!?」

「くそっ! 転移魔法使いかよ!」


 ふむ。全員で四人。一人は私の後ろ。


「バレバレだよ」

「なっ!?」


 後ろから襲いかかってきた男の腕をつかみ、密集していた男三人のほうへ投げ飛ばす。二人にヒット。


「うぅ…」

「こ、こいつぅぅ!」


 残った一人が懐からナイフを取りだし、わたしに迫ってきた。が、その動きはあまりに杜撰だ。わたしに対する恐怖からなのか、少し切っ先も震えている。

 ……なら、心をバキバキに折ってやろう。


 亜空間収納から短剣を取りだし、男のナイフを受け止める。


「収納魔法!?」

「ご名答」


 くるりと手首を返してナイフを弾き飛ばしつつ、男の喉の薄皮を切る。


「ひ、ひぃぃ! く、来るなぁ!」


 大の大人がみっともないねぇ…

 ゆっくり。一歩一歩踏みしめるように男へと近づく。

 ズリズリと男が下がっていくが、とうとう背中が壁に当たり、下がれなくなる。


「や、やめてくれぇぇ! お、オレが悪かった。だ、だから…」

「許すわけないでしょ」


 さらに1歩男に近づき…そこで不意に肩を掴まれた。


「ユーリ様。もういいです」

「…アニスか。そうね。殺す気も失せたわ」


 目の前の男は心を完全に折られ、気を失っていた。流石に意識の無い相手を嬲る趣味はわたしには無い。


「あとは任せるわね」

「……どちらに?」

「ちょっとね」


 さてと。じゃあ、子供たちも迎えに行こうか。



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