へるぷみー

 とりあえず首輪は邪魔なので、外す。


「えっ!?」


 子供たちが同じように外そうとするが、外れはしない。まぁ、もともと囚人とかに付けるものだからね。子供の力ではビクともしない。


「ちょっと待っててね」


 落ち着かせるように声を掛けつつ、立ち上がって魔力を広げる。

 とりあえず部屋に結界を張って誰も入れないようにして…広げた魔力によってここと同じ様な部屋があと三つある事が分かったので、そこも入れないようにしておく。よし、これで子供達の安全は確保出来た。


「よし。じゃあ外すね」


 子供たちの首輪に指先で触れて、魔力を流す。それだけでパキンっと音を立てて首輪が外れる。

 もともと魔封じの首輪っていうのは、着けた対象の魔力を吸収して、魔法を使えなくするもの。だから、首輪の許容量を超す魔力を流せば、壊れる。魔王の魔力量舐めるんじゃないわよ。


「ちょっと静かにしててね」


 少し子供たちから離れ、わたしは何も無い空中から、目的のものを取り出す。これは亜空間収納って魔法で、なんでも入るからかなり便利な魔法。まぁその分魔力結構喰うけど。

 その亜空間収納から取り出したのは、魔導石版タブレットと呼ばれる道具。色々とできる便利道具だけど、今回は通話の為に使う。


「…もしもし」

『…あら。お仕事サボったユーリ様』


 魔導石版タブレットを耳に当てて魔力を流せば、目的の人物のちょっと怒りと呆れが含まれた声がこちらに届く。


「その皮肉は今はいい。わたしの現在地を教えるから、兵士連れてきて」

『…なにがあったのですか?』

「最近頻発してるって報告にあった誘拐事件の拠点を見つけた」

『…なるほど。つまりユーリ様も攫われたのですね』

「…悪いか」

『いえ。ではすぐに』


 そこで通信を終える。一応この魔導石版タブレットには現在地を伝える機能が備わっているので、それを頼りに向かってくるはずだ。

 ……いつもは切ってるから、サボってるときは見つかんないんだよ。緊急時の為に動かしといてとアニスには文句言われるけど。


「うん。これで助けが来るはずだよ」


 一応会話は聞かれないよう結界を張っていたので、大丈夫だろう。


「亜空間収納使えるって…一体、あなたは何者なの…?」

「…通りすがりの暇人?」


 だからその目やめろ。おい。



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