兵士と遊ぼう

 さてと。壊しちゃった壁を魔法で直して……うん。元通り。魔法って便利。


「ユーリ様、癇癪起こして壁壊すのはいい加減やめてくださいね」

「誰のせいだ、誰の」


 まったく……まだわたしは800歳くらいだよ。


「まだという言葉の使い方が違っているような気が…ぐっ!」

「あなたはその口を閉じることできないの?」

「できません」

「言い切った!?」









「で、今日の予定は?」

「………くひひらけまふぇん口開けません


 魔法で口を縫いつけたからな。ははは。


「ほい。で?」


 魔法を解除して再度問いかける。


「…えっと、いつも通りです」

「……遊んでくる」

「ダメですよ」

「いーやー! 兵士と遊んでくるっ!」


 その瞬間、ユーリの姿が掻き消える。


「……兵士と遊ぶって。本職が聞いたら怒り狂いそうですね」


 








 という訳で、仕事から逃れて城内の訓練場へ。

 ここの訓練場はかなり広くて、兵士の数も多い。確か最後に確認した人数は……300弱?


「あ、え!? ユ、ユーリ様!?」


 あやべ、見つかった。第一騎士団の隊長だな。


「やっほ。遊びに来た」

「遊びにって……」

「新人には言ってないよね?」


 それは魔王わたしの容姿に関してだ。基本的にわたしの姿は知られてないからね。

 というのもわたし普段は魔法で認識阻害を弱く掛けてるから、魔王がわたしだって知ってないとそもそも認識出来ないのよね。ただの幼…うん、子供に見られる。


「まぁ言っても信じませんから……」

「むぅ。それはそれでやだな」

「…ご自分の容姿を考えて下さい。誰がそのお姿を見て、大の大人と剣でやりあえると思うんですか」


 …アニスに近しいものを感じる。まぁあっちはからかってるんだけど、こっちはただ単なる評価だからね。流石に怒ることはしない。


「で、訓練は順調?」

「はい。今年の新人は期待できそうです。……ただ、先程の轟音でパニックになっている者が複数いましたが」

「そ、それは…ごめん」

「…また、アニス様ですか」

「そだよ。ほんっとアイツは……」


 あ、思い出したらまた腹たってきた。


「や、やめてくださいね?まじで」

「……流石に今日これ以上やったらアニス死ぬからね。やらないよ」

「……(明日はやるんだ)」


 当然。でないと気が済まん!

 ……まぁ、壁を壊さないようにはするけど。




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