まだ成長するんだからっ!

 ……まさか祝辞を行った次の日に、わたしの性別が疑問視されているという報告書が届くとは思わなかった。


「わたしってそんなに分かりにくい?」

「まぁ、あの声ですし……」


 確かに中性的な声を目指したけど。けどね!?


「姿みせます?」


 ほれほれとアニスが、国全体に姿を投影する為の魔導具を見せてくる。

 それは鏡型の魔導具で、その鏡に写った物体を別の魔導具を通して拡大、投影するという優れものだ。因みに結構高価。壊したらちょっとヤバいやつ。


「やらないよ!」

「むぅ……絶対人気になるのに」

「……マスコット的な人気だよね、それ」


 言いたくはない…けど、わたしは少々身長が低い。


「少々じゃない気が…ぐほっ!?」


 アニスは腹を殴って黙らせて。とにかく! わたしはそのせいで子どもに見られるんだよね。街でも嬢ちゃん呼びだし。

 だから姿を見せるとなると、絶対マスコット的な人気になる。絶対そうに違いない。


「自覚あるんですね…」

「…悪いか」

「いえ?認めないよりよっぽどっぶ!?」

「認めちゃいないよ!」


 自覚はあっても認めてないよ! まだ成長するんだからっ!


「……ユーリ様って確かわたしより」

「言うな」

「………(ロリババア)」


 プチッ。



 


◆ ◆ ◆



 兵士がいつものように城内の訓練場で訓練していると……突然轟音が鳴り響いた。


「な、なんだ!?」

「敵襲かっ?!」


 ザワザワと新米兵士が騒ぎ出すが……ベテラン達は「あぁ…」と何故か納得したような表情を浮かべる。


「あ、あの。この音は? 敵襲ではないんです、か?」


 新人の兵士が、やけに落ち着いたベテランの兵士を疑問に思い、尋ねてくる。


「あぁ、敵襲じゃないぞ。寧ろ逆だ」

「ぎ、逆?」

「ああ。敵どころか味方だ。それも、最強の」

「み、味方…? あんな轟音を出したのが、ですか?」

「ああ」


 (俺達も経験したなぁ)と懐かしげに慌てる新人たちを見つめるベテラン達であった……。



◆◆◆



「あぁ…やっちゃった」


 半壊した壁を見つめる。そして、さらにその向こうで壁に突き刺さっている…アニス。し、死んでないよね!?


「ごふっ! さ、流石にキツいです…」


 ガラガラと壁の瓦礫からアニスが起き上がる。頭から血を流してはいるけれど、命に別条はなさそうだ。良かった…。


「ご、ごめん……でも、アニスが悪いんだからね?」


 ロリババアとか言わなければわたしだってこんなことしなかったよ。


「……夢を持つのはいいことです」

「……ちょっともっかい殴らせろ」




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