お仕事増えた!
十分に収穫祭を楽しんだので、ひょいっと転移で城の執務室へと戻る。すると目の前にアニスが立っていた。
「お帰りなさいませ。楽しみましたか?」
ニッコリと笑顔でアニスが聞いてくる。
……いやな予感しかしない。
「楽しんでいたようですので、がんばれますよね」
そう言いながらドンッ!と重そうな書類の束を机の上に置く。今朝の分も終わっていないのに、それ以上の量が目の前にある。
…え、それやるの?今から?
「がんばれますよね?」
「………やればいいんでしょ」
渋々椅子に座り、書類の束を捌いていく。はぁ…この仕事さえなければ、魔王って楽なのに。お金いっぱい貰えるし。なくても過ごせるし。
万年筆を手に取り、書類にさっと目を通して問題なければわたしのサインを書いていく。それと書類の種類によっては国璽も押す。単純作業だけど量が多すぎるからめちゃ面倒臭い。
「……ちゃんと見てます?」
訝しげにアニスが尋ねてくる。まぁ、かなりの速さで捌いてるからね。そう思うのも無理はない。
もちろん適当にやれば早く終わるけれど、後でやり直すのは結局わたしなので、ちゃんとやってるよ。
「…文官が見たら卒倒しそうですね」
「そう?」
適当に相槌を打ちつつ確認を進めていく。
あー、これはわたしじゃないな。避け避け。こっちはお金の支出か……ん?
「ねぇアニス」
「はい、なんでしょうか?」
「ここ、おかしくない?」
ペラリと1枚の書類をアニスに向けて、指摘箇所を万年筆の先で指す。
「……本当ですね。計算が合いません」
「やっぱり? 調べといて」
「はい」
わたしからその合わない書類を受け取り、アニスが姿を消す。わたしは気付けるけど、普通のヒトならアニスの気配には気付かないだろうなぁ…もうアニスが魔王でもいい気がする。
さて。アニスは居なくなったけどやる事は変わらない。流石に今日はもうサボらないよ。
◆ ◆ ◆
正直適当にやっているかと思っていましたが…この書類の不備を見つけたことで、ちゃんと見ていたということが分かります。ほんと無駄にスペック高いですよね…
「この書類の不備に心当たりは?」
「え? 確認します……ほんとだ。すぐに再計算します」
経理担当に書類を渡す。エリートと言われるだけあって、その対応は早い。
「どうぞ。ただの計算ミスでした。以後ないように気を付けます」
「そうしてください」
……横領ではなかっただけ、良かったとしましょう。もしあったとすれば、この城の恥ですから。
訂正した書類を持って執務室へと戻れば、ユーリ様が嫌な顔を隠すことも無く書類と格闘し続けていました。
……正直サボっていると思っていたのですが、意外ですね。まぁだからといって仕事は減らしませんが。
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