だぁれ?

 まぁ嘆いてても仕方ないので魔王については受け入れたんだけど……仕事が多いのなんのって。

 仕事内容は基本的に書類仕事なんだけど、毎日毎日睨めっこしてサインしても減ることの無い山山山。わたしを過労死させる気かっつーの。

 そうアニスに文句を言ったんだけどね……


『貴方様が過労死するところを逆に見てみたいです』


 なんて言われた。いや見てみたいって、死んだら終わりだからね!? 軽く言わないで!?


 ……でまぁ休みたいから仕事を早く終わらせようとして、そしたら次々と仕事がきて……無限ループ。いやほんとに本気でわたしのこと過労死させる気だって思ったよ。

 だからこうして抜け出したのだ! わははっ!

 ……まぁ、夕暮れには戻りますけどね。わたしが仕事しなくて困るのは下のヒトだし。でもそれまで全力で楽しむ! あっ、あそこの屋台のやつ美味しそー!





「お嬢さん、1人かい?」


 ルンルンと収穫祭を楽しんでいると、1人の青年に声をかけられた。身なりは質が良いものだけれど、なんかヤダ。


「あなた、だぁれ?」

「これは失礼。モートンと言う。そして話は戻るが、お嬢さん1人なのかい?大丈夫だ、わたしが付いていてあげよう」


 ……なんかコイツ、痛いやつだな。自分のことカッコイイと勘違いしてる奴だ。 

 まぁ、顔は整ってるかもしれないけど……城にはこの青年より美形が大量にいるし。え、ハーレムだ? そんなん興味ないない。わたしは生涯独身だ。魔王は血筋で決まる訳じゃないから世継ぎなんて考えなくていい。


「大丈夫だよ?」


 顔にも惹かれんし、ニッコリと笑顔で断る。内心早くどっかいってくんねぇかなぁー、とか思ってたりする。


「まあまあそう言わずに」


 無理やり手を握ろうとしてきたので、避ける。すると青年の顔があからさまに怒りに染まった。


「このガキっ!この俺がだれか分かって歯向かうのかっ!」


 あら。それが本性か。


「だぁれ?」

「ふん!魔王城で魔王様に仕えるものだぞ!最高位だぞっ!」


 ……ダウト。


「そっかぁ。じゃあ知り合い沢山のとこ、連れてってあげるね」

「……は?」


 その瞬間、青年の姿が掻き消える。

 ……無事でいるといいねー。


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