第7話 いざ、体験入部2日目!

「おはよう、かずくん。よく眠れた?」


 翌朝、目が覚めて学校の準備をそそくさと進め、リビングに降りてくる。

 リビングでは母が朝ごはんを用意していた。ふと俺が降りて来たのを確認すると、声をかけてくる。


「おはよう、母さん。眠れたよ。」


 挨拶を返しながら食卓について朝ごはんを頂く。今日はトーストとサラダだった。


「ほら、今日のお弁当も置いておくわね」

「あ、ありがとう」


 食べ進めている間にも机に弁当を置いてくれる母に感謝を伝えると、時間を確認する。家を出るまでそんなに時間が余っていなかった。急いでトーストを口に詰め込むと、椅子から立ち上がる。


「んじゃ、母さん。時間もないから行ってくるね」

「いってらっしゃい。気をつけてね?」


 母に挨拶すると鞄を持って玄関へと向かい、靴を履いて扉を開けて学校へと向かった。





「ふぅ、今日の部活も楽しみだ」


 家から駅へと着き、電車に揺られて学校の最寄駅へと着く。学校までの道のりを歩きながら独り言のように呟く。


「あ、その前に授業もあるんだった……」


 正直勉強は嫌いだ。だが、勉強も頑張らないとやっていけない、あまり乗り気ではなかったが流石に頑張ろうと決意して校舎へと入っていく。



--授業はなんとか寝ずに乗り越えた、とだけ伝えておく--





「ふぅ、終わった……。やっと部活行ける……!」


 帰りのHRが終わると、大きく伸びをして立ち上がる。

 今日は外と聞いていたので、早速向かおうと鞄を持つと、不意に声をかけられた。


「えっと、伊藤くん……だったよね?」

「え……、そうだけど……?」


 急に声をかけられて驚いたが、視線を向ければ昨日部活で見かけた相手だった。


「伊藤くん、俺のことわかる?」

「えーっと、昨日ハンド部にいた…佐藤くんだよね?」

「よかった、忘れてなくて……。俺は佐藤弘樹さとうひろき。よろしくね。伊藤くん、ハンド部に今日も行くの?」

「うん、行くよ」

「そっか、もしあれなら、一緒に行かない?今日外練みたいだし」


 ありがたいお言葉だった。これをきっかけにクラスメイトとして仲良くできるのは僥倖である。


「えーっと、こちらこそ、お願いしてもいい?」

「OK。敬語じゃなくていいよ。俺もタメ口で話させてもらうから。カバンとってくるから少し待ってて」


 そう言って自分の席へと走っていく佐藤くん。鞄を持って再び帰ってきた。


「おまたせ。んじゃいこう」


 2人で教室を出てグラウンドへと向かった。



--佐藤くんは、小学校からハンドボールをやっている、とのことだった。ポジションが左45°よんじゅうごどだそうだ。


「……佐藤くん、ごめん。ポジション、まだわからないんだよね……」

「弘樹でいいよ。そっか、じゃあ軽く今教えようか」


 そう言って弘樹はポジションについて喋り出した。


--弘樹曰く、ポジションはキーパーを除いて6個あるとのことだった。弘樹は1つ1つ解説を入れて教えてくれた。


 まず、ゴールに対して半円状に5人が並び、相手のディフェンスの中に1人のポジションとなる。


 まず半円の真ん中にいるのが「センター」であり、センターはプレーを指示する司令塔の役割を果たす。


 次に、半円の斜めに位置するのが「45°よんじゅうごど」と呼ばれ、左と右が存在する。45°はメインでシュートを打つ役割で、特に左45°はチームのエースがやることが多い。


 半円の両端に位置するのが「サイド」であり、サイドも左と右がある。サイドは足が速い選手がやることが多く、速攻プレーをメインにしていく。


 相手のディフェンスの中に潜り込むポジションは「ポスト」と呼ばれ、バスケのセンターのようにゴリゴリのインサイドプレーをするところで、相手ディフェンスにブロックをかけてシューターが打ちやすくしたり、サイドと同じように走るのをメインとする。


 右と左があるポジションに関しては、右は左利きがやることが多い。



 彼の言ったことをまとめるとこんな感じだった。

 正直何を言っているのかわからない部分もあったが、それでもとても面白いと感じた。


「和馬には何を言ってるかわからなかったかもな……ごめんな?」

「いや、勉強になるよ。ありがとう」


 グラウンドに向かいながら、教えてもらったポジションを頭の中で反芻する。

 ふと、弘樹は左45°と言っていたのを思い出した。


「……てことは、弘樹はエースだったってこと?」

「いやぁ、恥ずかしながら……」


 俺が問いかけると、弘樹は恥ずかしそうに照れながらそんなことを口にした。

 こいつ、本当はすごいんじゃないだろうか。

 そんなふうに思いながら、グラウンドが見えてきた。


「さて、今日も部活がんばろー! 和馬も今日から参加になるんじゃないか?」

「え、そうなの?」

「昨日終わり際に部長が参加させる……って言ってた気がするよ」

「マジか……」


 流石に急に言われても嬉しさよりも戸惑いが先に立つ。

 俺が混ざって大丈夫なんだろうか。

 そんな気持ちが顔に出ていたのか、弘樹が笑いながらフォローしてくれる。


「大丈夫だって。流石に初心者を1人で参加させたりしないと思う。部長もその辺は考えてくれるでしょ」

「……だといいなぁ……」


 そんな風に話しながらもグラウンドの近くの部室へとついた。


「さて、ここが部室だよ。1年生はここの外で着替えて準備するから、和馬も手伝ってよ」

「お、おう」


 弘樹の言うがまま、部室の外へと鞄を置けば、弘樹がその場でジャージ姿に着替える。俺も急いでジャージに着替えて準備を整える。


 --いよいよ、2日目が始まる。


 ……この時俺は、2日目があんなにキツくなるとは思ってもいなかった。


-第7話 完

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