第55話
コレットはアレクシアとエルザにミリアクト伯爵家で何があったのかを説明するために口を開く。
数週間前までは、あの時のことを思い出すだけで震えてしまうくらいだったのに今はきちんと話すことができるのはヴァンのおかげだと思った。
「信じられないわ……!なんてひどいの」
「コレット様の立場を無理矢理奪うなんて……ミリアクト伯爵も夫人も何を考えているのしら」
「だからディオン様はあなたを追い出してから好き放題しているのね。きっとフェリベール公爵もミリアクト伯爵家が何も言わないならいいと放置してるのよ」
「そうかもしれないわね」
アレクシアとエルザがディオンのことを前もって教えてくれていたのでコレットは彼の裏の顔を知っていた。
コレットがディオンの本性を暴こうとしていたため、今まで自由に振る舞うことができずに、ずっといい婚約者を演じていたのだろう。
リリアーヌが婚約者になった途端、自由に振る舞い出したということは彼女には何もできないとわかっているからだ。
王都でたまたま会った際も、ディオンとリリアーヌは仲がよさそうには見えなかった。
言い争っている姿を見たからかもしれないが、ディオンがリリアーヌを守ろうと大切にしている様子はなかったし、リリアーヌはディオンの行動に苛立っているように思えた。
(やっぱり二人の関係はうまくいっていないのね……)
コレットがミリアクト伯爵家を追い出される前に、二人は仲睦まじいように見えたが、ディオンはリリアーヌについた方がいいと判断しただけのようだ。
それからコレットはアレクシアとエルザにここ最近の様子を聞いていた。
リリアーヌがパーティーに顔を出したのは一度だけ。
しかしすぐに逃げ帰ってしまい、ミリアクト伯爵たちと再び会場に来たものの挽回はできず……そのまま表に出てきていないそうだ。
もしリリアーヌがパーティーに出ていないのだとしたら、あの拙いマナーが原因なのかもしれない。
コレットが考え込んでいると、アレクシアとエルザは心配そうにこちらを見ている。
二人を安心させるようにコレットは微笑んだ。
「わたくしはミリアクト伯爵家を出てよかったと思っているの。今は愛する人と共にいることができて幸せですわ」
コレットの言葉にアレクシアとエルザは驚いたように目を見開き顔を合わせた後に、嬉しそうに笑みを浮かべている。
「コレット様が幸せなら私たちも嬉しいわ」
「また会えてよかった。本当にっ、本当に心配したんだから……!」
「アレクシア様、エルザ様……ありがとうございます」
その後、アレクシアとエルザと共にリリアーヌや伯爵たちのことを気にすることなく思いきり声を出して笑い合った。
いつもはリリアーヌや両親にバレないように、ひっそりと隠れながら話しをしたり手紙を受け渡してやりとりをしていたが、今はその必要はない。
話は途切れることなく、今までの分も三人で盛り上がっていた。
自由に話せることがこんなに楽しいのだと久しぶりに思い出すことができた。
「昔のコレットに戻ったみたい」とアレクシアに言われて、エルザも嬉しそうに「本当ね」と頷く。
そしてアレクシアは相変わらず、エヴァリルート王国の王太子であるウィリアムに言い寄られているらしいが拒否しているそうだ。
「あんな奴と絶対に結婚したくないわ!早く諦めてくれないかしら」
「ウィリアム殿下は相変わらずなのですか?」
「そう、ディオン様と城下町に行って、一緒によくないことをしていると聞いたわ。王妃殿下もウィリアム殿下を甘やかしてばかりで……ありえない」
「アレクシア様が可哀想だわ」
「わたくしが他の令息と仲良くなると圧力を掛けるの。でも最後まで抵抗を続けるつもりよ」
ウィリアムはディオンと仲がいい。
王妃に甘やかされているウィリアムはやりたい放題だった。
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