第64話:武力介入

同じ軌道で公転する2つの惑星。

その文明は、全く異なる方向へ進んでいた。


ソロルはアクウァを思わせる、自然そのままの美しい水惑星だ。

住民は母なる海と自然を大切に、質素で穏やかに暮らしている。

この澄んだ大気と水を、ずっと維持していてほしい。


対するフラテルの状況は、まるで昔の地球のようだ。

便利さや豊かさを求めて、自然破壊を続けている。

森林は水を蓄える。

その木を伐採し続ければどうなるか。

フラテルの王は分からないのだろうか?


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




宇宙そらへ上がった狙撃手たち。

彼等は以前アクウァを隕石群の飛来から護った時のように、それぞれの小型艇ふねに乗り込み、敵軍を待ち受ける。

隕石群とは違い、今回は意思を持つ相手、臨機応変に対応する事の難易度は高い。


「フラテルの爆撃機、来ます。タイプA、出撃許可10」


フラテル側の管理コンピューターにアクセスするセラフィが告げる。

敵部隊の戦闘機は、自由勝手に出撃出来るわけではない。

管制塔の許可を得なければ、離陸も出来ない。

セラフィはその管理コンピューターを掌握し、出撃制限をかけていた。

それによって、フラテル軍は数で圧倒する事は出来なくなっている。

それは例えるなら、トンネルや橋などで敵の数を抑えるのと似ていた。


「狙撃隊、ステルス展開! 敵機殲滅に向かえ」


艦長席に座るトオヤは、所有者権限でアルビレオの11の砲門を操り、遊撃を担う。


「バカンスの邪魔する奴等は、全部撃ち落としてやるぜ」


狙撃隊の隊長ティオが、真っ先に1機を撃墜した。

セラフィのハッキングによって得た敵機のデータは、全てティオたちに流されている。

フラテル軍の戦闘機は全ての構造と弱点を把握され、狙撃隊の砲撃に沈んでいった。


「タイプB、出撃許可20」


再び告げるセラフィ。

タイプBは先のAよりも火力が劣るが、ペアを組んでの戦闘に長けていた。


「コンビネーションなら負けないわよ」


ティオとの呼吸はピッタリのレシカが協力し、2機を同時に撃墜する。

タイプAもタイプBも、一流狙撃手たちの敵ではなかった。

ステルス展開中の狙撃隊の機体は、宇宙空間に溶け込み、敵には見つかりにくくなっている。

敵機は砲撃が放たれた位置を狙って撃ってくるが、ティオたちは砲撃発射直後に移動するので、敵の砲撃は虚しく宇宙空間に消えた。

時には、フラテルの戦闘機が同士討ちになる事もあった。


「空母、来ます。出撃許可1」

「狙撃隊、一斉射撃後に散開!」


セラフィからの情報を得て、ティオが部隊に命じる。


『主砲発射!』


狙撃隊が散開した直後、アルビレオから放たれた主砲が、敵の航空母艦を貫く。

搭載した多数の戦闘機を放つ時間も無く、フラテルの空母は爆散した。

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