第63話:森林と水

アルビレオの医務室で、僕たちは意識を取り戻した獣人から話を聞いた。

墜落してきた小型艇から救助した獣人の青年は、フラテルで地質研究をしているロギア博士だった。

博士はフラテルの地下水脈が縮小してきた原因を調べていたところ、謎の集団に拘束されたという。

監禁された場所で、彼等の計画を聞いてしまった博士は隙をみて脱出し、ソロルに逃れてきた。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「アエテルヌムの使者様たちがいらして良かった。どうかソロル星を護ってあげて下さい」


医務室のベッドの上で起き上がり、ロギア博士はトオヤたちに願う。


「地下水脈が涸れてきているのは、木々を伐採し過ぎたからです。昔のように自然と共に生きていれば、涸れる事はないんです」


博士の言葉を、コロニーから来たメンバーは充分に理解出来る。

何故ならそれは、かつて地球人も辿った滅びの道だからだ。

森林が減少するとどうなるか、砂漠化した地球を知る人々はよく分かっている。


「なのにあの部族の王は次々に木を切らせて、巨大な建造物を作ろうとしてるんです。しかも水不足の解決方法としてソロル星の占領なんて……」

「暗殺した方が良さそうな王だね」


ロギア博士の話を聞いた移民団メンバーの1人、狙撃成功率ナンバーワンのティオが物騒な事を言う。


「向こうが攻めてきたら遠慮なく撃っていいよ」


トオヤまでそんな事を言い出す。


「撃墜は大気圏外がいいと思うわ。海を汚さないように」


レシカも敵をソロル星に落とさないつもりの撃墜提案をしている。

話がまとまり、狙撃部隊は宇宙へ上がって敵を迎え撃つ準備にかかった。


トオヤたちコロニーからの乗組員は、宇宙飛行士の訓練と共に軍隊教育も受けている。

正当防衛となれば、迷わず敵を撃つように育てられた者たちだ。



「僕、この星で待機して防壁バリアを張るよ。アクウァを護ってくれた師匠みたいに、この星を護りたい」

「じゃあ、僕はカールに精神同調して防壁を手伝うね」

『僕も、カールを手伝いたい』


一方、カールは、ソロル星を護る防壁を張る事を申し出る。

チアルム、アニムスたちサイキックを持つ子供たちも、サポート役になると宣言した。


「なら、俺は弟子を見守りつつ精神同調でサポートだな」


ベガは白い子イルカ姿のカールを撫でて笑みを見せる。

防壁使いの弟子は、今では砲撃も防ぐ強固な防壁を張れるほどに成長していた。



ロギア博士が乗ってきた小型艇は、フラテルの貴族が遊びに使う簡易操作タイプ。

そこに残るデータには、特に役立つようなものは無かった。

しかしメインコンピューターはフラテルのネットワークに入っており、そこからハッキングが出来る。


「では、私はこれにアクセスしてみます」


諜報活動に優れたスペックを与えられているセラフィは、フラテルの軍用データベースにハッキングを試みる。

結果、ソロル星へ攻め込む準備は、完了に近い事が判明した。

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