第65話:幽閉された王子

セラフィのハッキングでフラテルの軍事データを得た僕たちは、政治に関わる裏データも手に入れた。

それは、森林の中央に位置する王国ドミナートルの情報。

そこには2人の王子がいて、その1人が反逆者として幽閉されているという。

ロギア博士は幽閉される前の王子と交流があったそうで、王子は博士の話を聞いてくれて、国王に進言しに行った直後から監禁されているらしい。

王家に理解者がいるのなら、森林の大規模な伐採を止める力になってもらおう。

僕とアイオは、管理コンピューターを掌握したセラフィのナビゲーションを受けつつ、幽閉された王子の救出に向かった。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「レスキュー対象【ラティオ・ウーナ・ドミナートル】、ドミナートル王家の第一王子です」


管理コンピューターから引き出した情報を、セラフィが告げる。

第一王子ラティオは、国王に歯向かったという理由で捕らえられ、政治犯を収容する施設に監禁されていた。


「ラティオ王子は知性の高い人物、森林の大規模伐採によって起こりうる砂漠化を国王に警告した結果、国王命令で拘束されました。王太子の地位は剥奪され、現在は政治犯扱いになっています」

「大昔の地球のような独裁政治だね」


セラフィから伝えられた情報を聞いて、トオヤは呟く。

ラティオ王子やロギア博士のような人物がいるなら、他にも森林伐採に警鐘を鳴らす者がいるかもしれない。


「政府に逆らうレジスタンスのような組織が存在するか、調べてくれ」

「了解。調査開始します」


トオヤの指示を受けて、セラフィがフラテル内の全組織から、抵抗運動系統をピックアップし始める。

予想通り、森林の大規模伐採に反対する組織が見つかった。


「まずは、ラティオ王子の救出だ。その後、思想を同じくする者たちとの接触を試みよう」

「王子にお会いしたら、これを見せて私の名前を伝えて下さい」


ロギア博士は、そう言って1本のペンを差し出す。

トオヤとアイオは目を合わせて頷き合い、アイオが進み出た。


差し出されたペンは地球の万年筆に似た構造で、白地に緑の蔦が描かれたもの。

蔦は王家を表すそうで、そのペンは王族から賜った物という事が分かる。

金色の小さな文字も刻まれており、その文字はラティオ王子の名前になっていた。


「では、しばらくお借りします」


アイオはそう言ってペンを受け取る。

移民団メンバーでラティオ王子と最初に会う事になるのは、施設からの救出を担うアイオ。

こうした救出作戦の場合、レスキュー対象を直接助け出すのはアイオの役目となっている。


直接現地へ向かうトオヤとアイオ、ハッキングでサポートするセラフィたちの、ラティオ王子救出作戦が始まった。

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