第46話:襲撃

山猫団は街で窃盗行為をしていたから、討伐隊が送り込まれても不思議ではない。

アジトの外で爆音が響いた時、僕はそう思っていた。

お金を稼ぐ方法を、教える大人がいなかったマヤたち。

体内からウイルスが消え、これから大人になれる子供たちには、色々な事を学ばせてあげたい。

街の人々からは嫌われているし、本人たちが望むならアルビレオに乗せて連れて行こうと思う。

その襲撃が無ければ、僕たちはそっと旅立つつもりだった。

彼らが子供たちを殺しに来なければ、僕たちは何も知らずにここを離れていただろう。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




ベガの弟子カールは優秀だった。

彼は山猫団のアジトになっている小屋を精神波で覆い、飛んできた手榴弾を投げた本人へと跳ね返す。

小屋を爆破しようとした者たちは、自らの爆弾によって壊滅した。


「にゃ?!」

「今の音、何?!」


ナオがまたシッポを膨らませ、マヤも普段聞かない爆音に慌てる。

ベッドで眠っていたニアも驚いて飛び起きるが、身体がふらついて倒れそうになり、近くにいたアイオに抱き留められた。


「大丈夫、ボクたちが護ります。だからもう少し眠りましょうね」


ニアを安心させるため、アイオは優しく抱き締めて穏やかな声で囁く。

その言葉と身体の温もりに身を委ねて、少女は再び意識を手放した。


「ちょっと様子を見てくる。みんなは小屋の防衛を頼む」

「「「了解!」」」


トオヤの指示に、アイオ、カール、チアルムが応える。

しゃべれないアニムスも頷く事で応えた。



トオヤが小屋の外に出てみると、小柄な獣人たちが複数人倒れているのが見えた。

小柄といっても子供ではないように感じる。

街では見かけた事が無い、ネズミに似た獣人たちだ。

微かな呻き声が聞こえてトオヤが振り向くと、仲間が反射された爆弾の巻き添えを食った獣人が倒れている。

爆弾を投げた者は全員死亡しているが、1人だけまだ息があった。


「山猫団に討伐令が出たのか?」


聞きながら、トオヤは精神感応テレパシーでネズミ獣人の心を読み取る。

聞かれた相手は黙秘するが、それは無駄な抵抗。

この星の住民はみんなサイキック未発達で、容易に心を読み取る事が出来た。


『政府が討伐令なんか出すものか』


その思考から、山猫団を襲った理由は政府からの命令ではない事が分かる。


『まさか異星人が味方していたとは。悔しい、あと少しで猫耳族を根絶やしに出来たのに』


爆弾犯たちは山猫団の討伐ではなく、猫耳族を滅ぼすつもりらしい。

その計画は、もっと以前から進められていた。

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