第4章:星の絆

第31話:惑星ミカルド

惑星アーラを出てワープしたアルビレオ号は、ミカルドという惑星を訪れた。

この惑星の知的生命体はサイキックの軍事利用が盛んで、素質を持つ者を見つけると軍に勧誘して兵士にしようとするらしい。

アルビレオ号は前回訪れた際に兵士の一部と遭遇したけれど、この惑星よりも高度な文明の産物に手を出すほど愚かではなかったそうで、何事も無く調査を済ませて飛び立ったという。

今回は地球人のサイキック能力者が複数いるので、兵士とはなるべく接触しない方がいいかもしれない。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「この辺りの森に地球の鹿に似た生物が生息しているらしい。食料補給に狩りに行こう」


惑星ミカルドの衛星ヨルムに着陸したアルビレオ号。

トオヤは乗組員の一部を連れて、食料補給が可能な森林地帯へ降下した。

狩猟が目的なので狙撃手たちの半数と、猟犬役としてライカがメンバーに加わる。

アイオはアルビレオに残り、降下メンバーに何か危険が感知されれば転送アポートで救助出来るように待機した。


『鹿系生物発見。そちらへ誘導します』

『OK、ティオがいる方へ頼む』


トオヤはライカの所有者に渡される、専用の通信機を持っている。

イヤホントーク型の通信機で連絡を取りつつ、狩りを進めた。


「はい、10頭目。血抜き頼むよ」

「おう、任せとけ」


ティオの射撃は好調で、10頭全て一撃で仕留めている。

血抜きはベガが引き受けていて、体重200kg近くある大型の鹿にロープをかけて、軽々と引き上げて太い木の枝に吊るした。


『20頭目、肉の確保完了。他の食材を確保しよう』

『渓流を発見、食糧になる魚類がいます』

『ライカの電撃で魚を気絶させられるか?』

『9割成功すると思われます』

『じゃあ電撃頼む』

『了解』


鹿狩りを終えると、トオヤたちはライカが見つけた渓流の魚獲りに向かう。

先に来ているライカは水辺に降りて電流を流そうとして、岩の間に何かを見つけた。


『渓流に人がいます。電撃に巻き込むおそれあり』

『電撃しばし待て。その人の状態は?』

『頭部負傷、心拍はありますが意識が無いようです』

『先に救助しよう』


ライカからの報告を受けて、トオヤたちは渓流へ降りてみた。

水面に突き出た岩と岩の間に挟まるようにして、頭から血を流しながら少年が倒れている。

顔が水面に出ているので溺死せずに済んでいるが、胸から下が流水に浸かっていて体温低下の危険があった。


「頭を打っているから、あまり動かさない方がいいな」


トオヤは川の中に入り、治癒系のサイキックを試してみた。

アルビレオの所有者に付与されるその力は、細胞の活動を活性化して損傷部分を修復するというもの。

倒れている少年の頭部に手をかざして意識を集中させると、出血が止まり、傷が塞がっていった。

脳の損傷を治癒させると、トオヤは少年を抱き上げる。

少年は目を開けたものの朦朧としている様子で、言葉を発したり身体を動かそうとしたりはしなかった。

どのくらい水に浸かっていたのかは不明だが、その身体は冷え切っている。


「あとはふねへ運んで治療した方がいいな」

「OK、魚は俺たちが獲っておくよ」


トオヤは渓流での食料確保を残りのメンバーに任せて、瞬間移動テレポートでアルビレオ号に帰還した。

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