第15話:宇宙から飛来するもの

アクウァの王ルウカ様は、この惑星ほしの子供たちを宇宙船ふねに乗せてほしいと言う。

孤児を引き取ってほしいのかと思ったら、そうじゃなかった。

子供たちはちゃんと両親がいる。

それどころかルウカ様の末息子まで頼まれた。

アエテルヌムとの交流を求めてなら大人の使者を出すだろうけど、子供だけの移民とはどういう事なのか。

詳しく話を聞いたら、危機的な状況を明かしてくれた。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




『この惑星ほしの人たちは水が無いと生きてゆけないように見えますが、海から離れて大丈夫なのですか?』

『アエテルヌムにも海があるので移住そのものは可能ですが、道中は狭い範囲でしか生活出来なくて、子供には辛いと思います。コールドスリープを使いますか?』


移住に関して、トオヤは気になる事を聞いてみる。

アクウァの民はイルカそっくりな身体で、水の無い場所では移動すら難しいように思えた。

アエテルヌムの環境を知るアイオの見立てでは、移住そのものは可能らしい。


『アクウァの民は、このように変身する事が可能です』


そう言いながら、王は自らの姿を変化させた。

白く長いストレートの髪を水の中で揺らめかせる、水色の瞳と白い肌の細身の男性。

トオヤよりも少し年上に見える、地球人の青年に似た姿に変わった。

白いローブを着た青年は、耳だけが地球人と少し違って長い。

それは、おとぎ話に出てくるエルフを連想させる長耳だった。


『子供たちもこれと似た身体になって、長期の陸上生活が可能です』

『第三王子のカールです。異星の方、お願いします。僕たちに未来を下さい』


そう話す青年ルウカのところへ子供のイルカが泳いでくると、ルウカを若返らせたような人間の子供に変わる。

その耳もルウカほどではないが、地球人に比べて長い。

子供はアイオの見た目と同じくらいの年頃の少年だった。


『事情を、話してもらえませんか?』


何か必死な様子が感じられて、トオヤは聞いてみた。

彼が持つ超感覚的知覚、予知にも似た力が、この惑星ほしに何かが起きると感じ始める。

ルウカは息子と顔を見合わせた後、真剣な表情でトオヤたちを見つめた。


『……この惑星ほしの民は、あと30回ほどしか朝を迎えられません』


あと30日でアクウァの民は滅びる。と、ルウカは言う。


『空から巨大な火の玉が幾つも降ってきて、私たちは焼き尽くされてしまうのです……』


それは、大型隕石の飛来による大災害を予知するものだった。

トオヤの超感覚的知覚よりも先まで、ルウカは視る事が出来るらしい。

ルウカが伝えてくる未来の映像は、燃え上がる隕石が幾つも海に落下する光景。

そんなものが海に落ちたら、海水が高温になって生物は生きてはいられない気がした。

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