第14話:惑星アクウァ

次の補給で僕たちが降りた惑星アクウァは、地球のように海や川がある水惑星だった。

そこにはイルカに似た知的生命体が棲んでいる。

D因子を無効化出来る遺伝子は無かったので、前回この近くを通過した際は、アルビレオは調査だけして去ったという。

今回は水や食材の補給をするため、僕たちは知的生命体との交流を試みる事にした。

あまり大勢で降下すると警戒されるので、まずは精神感応テレパシーが使える僕とアイオとベガの3人で行ってみよう。

ベガはここ最近酔っぱらうと女湯に入ろうとする悪癖が災いして、女性乗組員からの評価が急下降中だ。

彼にはここでいいところを見せてもらわないと、ただのスケベオヤジになってしまうから、ちょっと頑張ってもらおうか。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




小型艇で大気圏突入を果たした後、パウアに操縦を頼んで上空に待機してもらい、トオヤたちはベガの防壁シールドに護られながら生身で降下してゆく。

念動力テレキネシスで身体を浮遊させつつ、ゆっくりと降下する3人を、イルカに似た知的生命体たちは既に感知しており、3体が水面まで来て待っていた。


『僕はトオヤといいます。攻撃の意志はありません』

『私はフィーン。信じよう、君たちから敵意は感じられない』


トオヤとのやりとりで、3人は侵略者ではない事を理解してもらえた。

精神感応テレパシーは自分の意志を相手に伝えるため、もしも敵意があれば読み取られてしまう。

それゆえに、攻撃の意志が無い事を理解してもらうにはちょうど良かった。


『僕たちは移民先に向かう途中で、ここには物資を求めて来ました』

『補給については国王陛下に許可を頂かないといけない。ついて来てくれ』


トオヤが補給を希望すると、フィーンはそう言って海底へと潜っていく。

3人は衣服が濡れないように、ベガの防壁シールドに包まれて水中に入った。


『ようこそ、異星の方たち。私ルウカ・アクウァは友好の意志をもって貴方たちをお迎えします』


透明度の高い青い海の底、珊瑚のようなものに覆われた丸い建物の中で待つのは、白いイルカに似た王。

パールホワイトの身体に、水色の宝石のような瞳。

アクウァの王は地球人が心惹かれ、癒しを感じる容姿をしていた。


『僕はトオヤ・ユージアライト。アルビレオ号の移民を代表して、陛下に御挨拶申し上げます。作法の違いは御容赦下さい』


トオヤは、なるべく失礼にならないように気を付けつつ挨拶した。

異なる文明では何が失礼にあたるか分からないので、マナーが分からない旨も伝えておく。

左右にはベガとアイオがいて、トオヤを真似て一礼する。


『問題ありません。私も民も敵意の無い相手には寛容ですから』

『ありがとうございます』


アクウァ王の水色の瞳が微笑むように細められ、精神感応テレパシーからは好意が感じられる。

トオヤは相手の寛大さに感謝を述べて、本題に入る事にした。


『今回はお願いがあって来ました。長旅になる移民団に、水と食料を譲って頂けないでしょうか? 通貨の類は役に立たないと思いますが、宝石や金属、または労働力なら提供出来るかもしれません』


トオヤの話を聞いた王は、少し考えている様子に見える。


『……物資は渡せる限りの量を提供します。その代わり1つお願いがあります』


やがて何か決意したかのように、王は言う。


『僕たちに出来る事でしょうか?』

『この星の子供たちを、移民に加えてもらえませんか?』


それは何か切実な、切羽詰まったような気持ちが感じられた。

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