ミーヨ・ザ・キッド

龍月小夜

第1話

さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!

正義の味方か、悪党か。

『ミーヨ・ザ・キッド』、全編の始まり始まり〜〜〜。



 ☆ ♪ネコの子トラの子ミーヨの介は、どこーがおうちかわからない

   クルクル目玉に四角い顔してひょこーりひょっこりやってきた ♪ ☆


 真っ赤な夕陽を背に受けて、やって来たのは荒野のお尋ね者

 猫又美代之介ねこまたみよのすけ、またの名をミーヨ・ザ・キッド と申すやさぐれ者でございます。

 自慢のしましま模様はさすらい者の証、

 ちびたしっぽをゆらゆらさせて、カウボーイハットに二丁拳銃、

 あの街この街、どの街まで行くのやら。

 流れ流れる、ああ、ミーヨ・ザ・キッド・・・


 ひなびた街のある酒場。

 ミーヨ・ザ・キッドが飲み干すのは、

 フレッシュミルクのストレートであります。

 「お前はミーヨ・ザ・キッドだな?」

 ややっと振り返るやそこにいるのは、

 おっといけねえ、保安缶バッジをつけたブル保安官ではありませんか!

 「ここで会ったが百年目、100万ドルのお尋ね者よ。飛んで火に入る夏の虫。

 あ、こいつぁ春から縁起がいいわ」

 ブル保安官が指差す先に、「お尋ね者」のポスターが!


   ヘン! ポスターなんざ、こちとら始めっから承知の介だ。

   わざわざやって来たのはな、

 

 バキューン!!


 電光石火の早業で、保安官の帽子を吹っ飛ばしましたるミーヨ・ザ・キッド、

 クルクルクル、と3回転した保安官は、

 ドタンと倒れてのびの介、

 ミーヨ・ザ・キッドはとっくにそこいらにはいないのでございます。

 

 そのブル保安官はと申しますと、

 バーテンダーのチワワワンが

 おしぼりでパタパタとあおいでおります。

 すると、

 ブッフッフ、と気がつきました保安官。

 ぐるりとあたりを見回して、エラソーに宣いました。

 

     逃げられちまっちゃあ仕方がない。

     ミーヨ・ザ・キッドは神出鬼没。

     憂さ晴らしだよ、一杯よこせとバーテンに、

     開けたチュウハイラッパ飲み! (コラ、勤務中でっせ!)

 

       * * * *

  

 ───『臨時ニュースを申し上げます。

     本日未明、ダックス知事の秘書であるレディ・金魚さんが豪華金魚鉢ごと

     誘拐されました。当局は、犯人はミーヨ・ザ・キッドであると見て捜査を

     進めています』───


     ミーヨ・ザ・キッドは正義の味方

     街のみんなは知っている。

     金持ち屋敷を襲っては、

     お金をみんなにばら撒くの。

     ミーヨ・ザ・キッドがやって来た!


     

 そうそう、それでわざと捕まって、脱獄しては、懸賞金を釣り上げるのが

 ミーヨ・ザ・キッドの常套手段であります。

 銀行から保安官事務所に運ばれる懸賞金、

 それを奪ってまたまたばら撒くのでありました。


     街のみんなは期待してる。

     懸賞金、脱獄たんびに上がるのさ。

     吊り上げさせろよ懸賞金。

     上げてどんどこばら撒いて。


 ミーヨ・ザ・キッドはどこからかつかんでいたのであります。

 ダックス知事の悪行を。

 レディ・金魚は愛魚あいざかな

 税金をガボガボ、ドバドバ貢いでいたのでありました。

     

     レディ・金魚が拐われた!

 

 もちろん、犯人は臨時ニュースで申し上げました通り、

 ミーヨ・ザ・キッドでございます。

 このレディ・金魚さん、キッドの隠れ家で金魚鉢ごとおくつろぎでございました。

 そこで、お決まりの身代金、

 言わずと知れた、ダックス知事への身代金でございます。

 しかし、レディ・金魚さんはこれまたなかなかご不満のようでありまして、曰く、

 「50万ドルとは安売りね」

  

 しかし、弘法も筆の誤りか、お猿が木から落っこちたのか、

 我らがミーヨ・ザ・キッド、まさに屋根から転げ落ちた心持ちかと思われます。

 なんと!

 どこから嗅ぎつけたのやら、

 ドラネコ一味が忍び込み、

 「あ〜〜れ〜〜」

 レディ・金魚さんをまた拐いされてしまったのであります!

 そのまま一味は軽トラ吹かして大爆走!

 ああ、危うし、豪華金魚鉢・・・!


 そこへまたまた、一味を追っかけるヒマもなく、

 泣きっ面に蜂とはこのことでありましょうか?

 敏腕ハスキー刑事が踏み込んで参ったのでございます。

 「レディ・金魚さんはどこだ!?」

 観念したか? ミーヨ・ザ・キッドは明後日あさって向いて、

 「ドラネコ一味に拐われた」

 ああ、なんと正直なるかなミーヨ・ザ・キッド・・・


 ではありますが、

 嘘を言うなとハスキー刑事、

 ポリチュウたちと隠れ家の一大ガサ入れでございます。

 あちこち探しましたが、もちろん、どこにもいようはずがございません。

 それどころか、 

 ミーヨ・ザ・キッドも、またまた、すでにそこいらにはいないのであります。


     レディ・金魚は無事なのか?

     ついに懸賞金は100万ドルに!

 

 レディ・金魚はどこ行った?

 ミーヨ・ザ・キッドも捜すのでありました。

 もちろん、心優しきミーヨ・ザ・キッド、

 レディ・金魚さんをどうこうしようなんて気は毛頭ございません。

 ドラネコ一味から助け出して、身代金を手に入れなければならないのであります。

 今のままでは50万ドルもばら撒き損ね。

 しょーがないなとミーヨ・ザ・キッド、

 100万ドルにするしかないかと

 あの酒場に入ったのでありました。 


 いくら何でも100万ドルだ。

 簡単に捕まっちゃあ面白くない。

 ブル保安官を振り飛ばし、 

 ミーヨ・ザ・キッドはまたもや忽然と消えたのでありました。


     * * * *


 レディ・金魚を助けなきゃ。

 ミーヨ・ザ・キッドは駆けずり回ります。

 しかし、なんと、ここでまたもや不覚の極み、うっと殴られ、のびの助。

 気がついたらば、ドラネコ一味の隠れ家に囚われの身となっておりました。

 ああ、ミーヨ・ザ・キッドの運命や如何に!

 いや、それどころではないのであります。


 な、なんと!


 そこには

 レディ・金魚とダックス知事も!

 も一つおまけにハスキー刑事。

 ドラネコ一味もガン首揃えておりまする。

 みんなツルツルとつるんでおったようでございます!


 ミーヨを突き出すダックス知事であります。

 でもって、100万ドルはダックス知事に。

 ハスキー刑事がレディ・金魚さんを

 ものの見事に救出の体でございます。

 『臨時ニュース』が駆け巡り・・・

 ああ、めでたし、めでたし!


 哀れなりブタ箱入りしたミーヨ・ザ・キッド、

 しかしながら、そこはニャンコの離れ技、

 格子をスリスリとすり抜けまして、

 ものの見事に脱獄を果たしたのでございます!

 

 実は、お手柄を横取りされちまったようなブル保安官、

 キッドのスリスリを横目でチラ見しておったのでありました。


 さてさて! ここからがクライマックスでございます!

     

     来るよ来る来る100万ドルが。

     保安官事務所にやって来る。

 

 悠々とやってきたダックス知事。

 バッチリ決めた正装蝶ネクタイ姿であります。

 無事帰った秘書レディ・金魚さんを豪華金魚鉢ごとエスコート致しまして、

 報道陣にも愛想振り撒きまくりでございます。

 100万ドルはまだかいなー、と。

 

     来たよ来た来たミーヨ・ザ・キッド、

     二丁拳銃火を噴いて、

     現金輸送車ぶっ飛ばす。

     100万ドルはどこへやら。

     あっという間もあらばこそ!


     降るよ降る降る100万ドルが。

     街の夜空に降りそそぐ。

     みんなワイワイ集まって、

     天晴れミーヨが大盤振る舞い!


 星降る夜空を背に広げ、

 一仕事終えたミーヨ・ザ・キッドは去って行くのであります。

 あの街この街、どの街へ?

 それは誰にもわからないのでございましょう。

 ミーヨ・ザ・キッドとは仮の姿。

 しかしてその正体は、

 『ネズミ小僧』であったとかなかったとか───


 

 これにて『ミーヨ・ザ・キッド』、全編の終わりでございます。

 完読御礼。

 


            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミーヨ・ザ・キッド 龍月小夜 @ryuuzuki1935

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画