第4話 始まりの兆し

「おい、ダーウィン!!居るんだろ!!出て来いよ!!」

拡声器を使って俺達は出てくるよう呼びかけを行う。

「やっぱり中まで入った方が……」

「中でフルボッコにされるだけだ。それならまだ、外の方が安全だ」

「これじゃあ、多分声届いてねぇよ……」

そう、今俺達が拡声器で声を届けているのは、駐屯地の入口付近で、ダーウィンが居るのは奥なのだ。

「仕方ないな、入口を吹き飛ばすか……。えいっ!!」

俺はポケットからスイッチを取り出し、思い切り押した。

ドカンっ!!

と大きな音がしたのと同時に駐屯地の半分が吹き飛んだ。

「お前何やってんだよ!!」

「まあ、敵だし吹き飛ばしても問題ないかなあって……」

「違う!!お前いつの間に爆弾なんて設置しておいたんだよ!!」

「そんなもん、いつかの復讐のために決まってるだろ。プラスチック爆弾じゃバレるから、核融合反応を起こして、地下崩落する系の爆発にしたんだ。褒めてくれ」

「そういう問題じゃ……、それよりも、晴は無事なのか!?」

「もちろん、端末の位置が爆発範囲外だったから、問題無い。それに、これで御相手さんが全員こっちに向かってきてくれて、助かる」

俺は駐屯地の方を指差す。

駐屯地からは、約8000人の兵士とダーウィンらしき兵士が出てきた。

「随分と派手な歓迎だな!!貴様ら何者だ!!」

「人にものを尋ねる時は、自分からするのが礼儀だろ、このバカタレが!!」

「ちょい!!初対面の相手にバカタレはダメだろがい!!」

隣で紘がツッコミを入れる。

「それもそうか、私はダーウィン大佐。貴様らの結晶を狩るために派遣されたエリート集団のヘッドであり、貴様らに死を与える者だ!!」

見事な敬礼をしながら、俺と紘に向かって自己紹介した。

「そうか、晴は、お前らが捕らえた男は生きているのか?」

「おい、連れてこい!!」

と後ろの兵士に晴を連れてこさせた。

晴はボロボロで、いかにも捕虜って感じだった。

「晴、生きてるか?」

「おっと、貴様らはこれから死ぬのだから、あの世で話してもらおうか」

「ちょっと黙れ、三流以下のカス。俺はお前に話しかけてないだろ」

「ほお、我々を三流以下のカスと呼ぶか……、全員戦闘用意!!」

約8000人の兵が俺達に銃口を構える。

「交渉、決裂だな……」

「まずもって交渉してないだろ!!」

「ここまで来たら、引けないな……。紘、結晶使っておけ、死にたくないならな!!」

俺は装備していた大斧を展開し、エネルギーパックをセットする。

「あぁもうっ!!どうにでもなりやがれ!!」

紘は、赤い結晶を刀にセットした。

「総員、目標を殲滅しろ!!」

ダーウィンの指示で敵兵は俺達に向かって発砲した。

「紘、お前は突っ込みながら敵を焼き払え!!俺は出力最大になったら、全員吹き飛ばすから、その作戦で!!」

「おう、任せろ!!」

そう指示を出し、紘が突っ込んで行く。

結晶の力により、身体が炎となって弾丸がすり抜けていく。

「ほらよっ!!」

紘が刀を振り、炎が敵兵に広がる。

想像以上の威力で約2000人に炎が広がった。

「すげぇ、めちゃくちゃ燃えるじゃねぇか……」

「きた、巻き込まれたくなかったら、逃げろよ紘!!」

俺は最大出力の大斧を地面に叩きつける。

地面の崩落により、兵士の7割が巻き込まれた。

「素晴らしい!!これが結晶と結晶を使用することを前提とした道具の力ですか!!やはり、結晶化しているしていないに関わらずこの種族は危険だ。我々で排除するぞ!!」

ダーウィンは、スナイパー部隊に折を撃つように指示する。

スナイパーは、折の肩を撃ち抜く。

「痛っっっったい!!クソッ、クソが!!」

俺は急いで止血を始める。

「折!!俺が傷口を焼いてくっ付ける。一時的には大丈夫だが、必ず後で治療してもらえよ」

紘は、傷口に結晶を押し当て、傷口を塞いだ。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!クソ熱いしくそ痛い!!!!」

「少し休んでろ、スナイパーは、俺が引きつける」

紘は、炎で加速しながら前に進む。

「良くもやってくれたな、死して償え!!!!」

紘は、スナイパー隊を焼き払う。

「俺だって、まだやれる!!」

俺はバッテリーパックを入れ替えて、斬撃を数回飛ばす。

相手の足元に斬撃が当たり、またしても地面が崩落した。

その後もひたすら暴れ回り、敵が数人の兵士とダーウィンのみになった。

「随分と暴れてくれたものだ、私の用意したエリート集団が壊滅とは……」

「これでエリート?笑わせるな。こんなん歯応えもないただのゴミだろ」

「折、お前ストレス凄いと言葉遣い荒々しくなる癖辞めな、弱そうに見えるぞ」

「指摘ありがとう、でも、コイツは他の有象無象とは違うぞ。気合い入れ……」

紘に指示を出した瞬間、俺は5mほど後方に吹き飛ばされた。

「所詮は出力頼りの遠距離支援型。至近距離で打撃を与えてしまえば、有効打としては十分だ。しかし、問題は……」

後方からダーウィンに斬り掛かる。

しかし、ダーウィンはそれを短剣で受け止める。

「は!?結晶の力を100%出した一撃だぞ、なんで、短剣ごときに止められてんだよ!!」

「それは、この短剣が特別なものだからだ。これはただの短剣ではなく、祝福を受けた短剣なのだ。神は我々に理不尽なまでの力である結晶に対する策を与えてくださったのだ。貴様らなど、これさえあれば皆殺しに出来るのだ!!」

短剣が紘を切り裂く。

その威力は凄まじく、紘はかなり遠くまで吹き飛ばされていた。

胸には、大きな切り傷が付けられており、この戦場では戦線復帰は難しいだろう。

「クソが……、マジでここで使うことになるとは」

紘は、ポケットから小瓶を取り出し、それを胸の傷に垂らす。

傷は深い部分が塞がったが、まだ完全に治ったわけではない。

「悪いが、あとは頼んだぜ……、折」

そのまま紘は、意識を失った。

「邪魔者は消えた。結晶化出来るやつらは後で蹂躙すれば良い。だが、貴様は違う。我々と同じように結晶の力を利用しているだけで、結晶化出来ないのであろう!!」

蹲っていた俺に容赦なく蹴りを入れてくるダーウィン。

「容赦ないな、同じ人間だろ」

「笑わせるな、貴様が我々と同じ人間な訳ないだろうが!!」

俺は顔を蹴り上げられた。

打撃は肉体的ダメージが酷いから、すごく痛い。

しかも、コイツら兵隊の靴には鉄板が入ってんだろ。

やばい、意識飛びそう……

「下等な結晶にすらなれない貴様に存在価値などあるわけないのだ!!故に、ここで貴様を痛ぶり、犠牲になった兵への手向けとしてやろう!!」

その後は、一方的に殴られては蹴られ、蹴られては殴られを繰り返し、貶され、踏み躙られ、悔しくなかったかと言えば嘘になるが、もうダメだった。

身体と精神がボロボロになった。

「さてと、そろそろ痛ぶるのも飽きたな。殺すか」

ダーウィンは、例の短剣を取り出し、俺の方えゆっくりと近付いてきた。

「ふっ、ふははっ、ふははははっ!!遂に殺して解放するとか考えてんじゃねぇだろうな!!」

ダーウィンは歩みを止めない。

「俺が死んでも意思は紡がれる。例え、何度蹂躙されてもな!!」

「強がるのはよせ、最後までみっともない姿を見せるな、家畜の価値もないゴミが」

ダーウィンは短剣を振りかざした。

ああ、これで俺の人生終わりか。短かったけど、いい人生だったな……。

運命を受け入れるように目を閉じた。

「地獄で後悔するといい!!」

「やめろぉぉぉぉぉ!!」

その瞬間、俺は目を開けた。

目の前には、晴がいた。

だが、晴の心臓には短剣が刺さっていた。

「な、なんで……」







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