第3話 結晶の真実と人質

「おい、晴はまだ生きているのか?」

『まだ生きているが、コイツも、貴様ら全員も死んでもらう事に変わりはないがな』

勝ち誇ったような高笑いで俺を煽る。

「やはり、お前達の狙いは結晶なんだな……」

『その通り!!お前達は我々にとってのエネルギーの塊なんだよ!!大人しく狩られろ』

「……けんな」

『あぁっ?何言ってるのか聞こえねぇよ!!ハキハキと……』

「ふざけんな!!!!俺達はお前達の道具でもなければ、エネルギー源でもないんだ!!それをあたかも家畜のように扱いやがって……、絶対に許さない!!」

『面白い、ならば、16:00に今送った座標の位置に来い。それまではこの生意気なクソガキは生かしておいてやる。来なければ、我々は侵攻を再開する』

(あと、1時間程か……)

「わかった。晴に傷一つでもつけてみろ、お前達の種を絶滅させてやる!!」

『貴様のような表に出てこない奴に負ける事は無いがな』

ブツンッ!!

相手は無理矢理通信装置を破壊したようだ。

「マズイな、まさか晴が敵に捕まるとは……」

それに、まさかここまで早く俺達を狩りに来るとは、何処から情報が漏れた?

だとしたら、ここがバレるのも時間の問題……

「この通信は……」

このラボには、全ての通信を確認することが出来る監視システムがあるのだが、明らかに外部と通信しようとしている端末の番号と通信内容が表示された。

俺は、通信を許可せず、端末の所持者を確認し、ソイツの元へ向かった。



「チッ、なんで通信出来ないんだよ!!」

避難区画に戻ると、1人だけ異様にイライラしている同い歳くらいの男がいた。

「早く送らないと、俺だけが助かることが出来なくなるだろうが……」

俺はソイツの肩を掴んだ。

「一体何に焦っていて、何の事を言ってるのか吐いてもらおうか……」

俺は笑顔のままそう言った。

「ちょっと何を言ってるのか、よく分からないのだが?」

「お前が敵に情報を流している事は知ってるんだよ!!」

俺はソイツから端末を取り上げ、プロジェクターに接続し、避難区画のスクリーンに投影する。

そこには、相手へのメッセージの送信失敗履歴が表示されていた。

「さてと、訳を話して貰おうか」

俺は胸倉を掴み、持ち上げた。

「クソっ!!もう少しで俺がこの世界で唯一の結晶化出来る人類になれるところだったのに!!」

「何か遺言はあるか?俺達がを裏切っておいてそんな事を抜かすとは、どこまでも浅はかな奴め」

「俺はお前達を売って、俺だけが得をする方が正しい!!だから、お前みたいに結晶化出来ない奴に価値なんて無いんだよ!!」

ソイツは結晶を出して、俺に攻撃しようとしてきたが、俺は結晶を奪い、ヒビが入る威力で握る。

「おい、お前が今やろうとしていることがどういうことか理解してるんだろうな!!」

「結晶化している人間の結晶を砕くと、どうなるか知ってるか?」

「別に何も起こらないだろ!!」

「不正解だ、砕ければ結晶は結晶の力を引き出すことが出来なくなり、そのエネルギーは、どこかえ消えて、黒い結晶になる。そして、その結晶には、結晶の持ち主の怨念が宿るとも言われている」

メキメキという音を鳴らしながら更に握る力を強める。

「クソッ!!結晶化出来ないくせに、調子に乗りやがっ!?」

「立場を弁えろ、お前は今、命を握られている。俺の掌で踊らされてることを忘れるなよ」

「うぐっ!!何故、物理的には握られている訳では無いのに、心臓が握られているような感覚……」

「当たり前だろ、結晶はお前達の存在そのもの。砕けば死ぬし、お前の肉体が死ねばお前そのものは結晶となるだけだ」

更に強い力で結晶を握る。

「結晶化出来なくても、結晶の弱点なら幾らでも知っている。舐めるなよ、三流以下のカスが!!」

パキッという音がし、目の前で膝をついて丸くなっている男は、更に苦しみ始めた。

ごめんなさい・・・・・・頼むからもう苦しいのは許して・・・・・・・・・・・・・・

そう言い続けているが、俺は結晶を握るのを辞めない。

「痛いだろ?苦しいだろ?辛いだろ?理不尽だろ?死にたいだろ?そして、俺のことが恨めしいだろ?これは今ここにいる皆がここに来るまで思ってたことだ。そして、それがお前の罪であり、これは罰だ」

男は悔しそうな表情を浮かべながら、

「この国は、いずれ蹂躙される運命なんだ!!俺は少し先に死ぬだけで、その運命に逆らうことは出来ないんだ!!だから精々今をいきがってろよ、無結晶!!」

勝ち誇った笑みを浮かべ、俺を煽ってきた。

「それが、お前の遺言だ。死をもって、今回の罪を償え」

そう吐き捨て、俺は結晶を握りつぶし、微細な粒子になるまで砕いた。

男の身体は結晶と同様に微細な粒子になった。

「俺は、晴を助けに行く。だから、ここの扉を閉じたら……」

「バカ野郎!!俺達も行くに決まってるだろ」

そう声を掛けられた先には、俺を虐めていたメンバーのリーダーのひろがいた。

「お前、凄いな。晴もいたとはいえ、確実にみんなを非難させて、みんな安全な場所に避難させて、食料や毛布、そして、それぞれの場所を決める……、俺には出来ないぜ」

「そうか、でも、俺は誰でもできることをただ淡々とこなしただけだ。そんな褒められることじゃ……」

「それだけじゃないです、私たち医療班は君の教えてくれたことを今は確実にこなすことで、大怪我をした人も助けられているの。だから、君には感謝してる」

「そう、なんですね……」

「ほら、もっと自信を持てよ‼」

紘は、俺の背中をバシバシと叩いてきた。

「そろそろ行かないと晴が助けられるなるから、行くよ。俺達が出たらここの扉は、閉めたら開けるな。何があってもだ。俺達の帰還は、ラボの管理画面で通信するから、そこを確認してくれ」

「わかった。3人で無事に帰ってきて」

「「行ってきます」」

そう言うと、俺と紘はシェルターから出た。








「んで、敵は今どこで晴を捕まえてるんだ?」

俺達は今、目的地に向かって自動二輪車を走らせている。

「端末の位置情報は、荒廃の進んだ例の地区だ」

「あそこか……、だだっ広いだけあって、ひと軍当たりなら駐屯できるな」

「そうかもな。これ、持っておけよ。一応結晶が装備できて、ある程度の属性なら付与して相手をぶった切れる刀だ。交渉が決裂したら、敵兵をすべて薙ぎ払う。手伝ってくれ」

「もちろんだ。これで罪を償わせてもらうぜ……」

紘は腰に装備した。

「ところで、防弾手段は?」

「ないっ‼自分の体は自分で守れ。俺には結晶の能力がないから、防弾・防刃はしてるけどな」

俺は服の下に着こんだ装備を軽く見せた。

「あっ‼自分だけそんな着込んでズリィ!!」

「仕方ないだろ、お前達と違って炎になれたり、水になれたり、土になれたりしないから、普通に死ぬんだよ、俺は」

「ハッハー‼そうかもしれないなぁ‼」

「とりあえず、急ぐぞー」

さらに二輪車の速度を上げて進む。






「約束の時間まであと5分か……、貴様の命もあと五分というところか。どうだ、友に裏切られるのは?」

「いや、あいつは来ますよ。なんなら、あいつは、俺や他のやつらよりも強いから」

「そうか、まあ、その絆も今日で全て滅び、結晶となる。貴様らは輝石となり果てるのが運命なのだ。最も不完全なる完全結晶マスター・クリスタルが生まれていなければ、我々が勝利することができるが、それが生まれれば我々が勝つことが出来なくなるだろう……」

「不完全なる完全結晶?」

「まあいい。今はな」





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